健康長寿の道は一日にしてならず ——生涯現役の秘訣は精神力にあり 香川靖雄 (女子栄養大学副学長)

生化学や栄養学の研究を通じて健康長寿の秘訣を探るのみならず、その成果を自ら実践し証明してきた女子栄養大学副学長の香川靖雄氏、93歳。いまなお現役で働き続ける氏に、これまでの歩みを交えつつ、人生百年時代を溌溂として生き切る生活習慣、〝精神の栄養学〟についてお話しいただいた。

日々「誰かのために」という思いで誠実に、一所懸命に生き、家族や友人を大事にし、また時においしい食事や楽しみを生活に取り入れていく。

それが幸福感を脳に与えるドーパミンの分泌に繋がり、循環器の緊張を緩和し病気を防ぐことに役立つのです

香川靖雄
女子栄養大学副学長

長年、生化学や栄養学を研究してきた私は今年6月で93歳を迎えますが、いまも現役で女子栄養大学(埼玉県)の副学長を務め、週に2、3回、栃木県の自宅から電車を乗り継ぎ片道2時間、往復4時間かけて通勤しています。

私の生活習慣を簡単にご紹介しますと、毎朝6時頃に起床、10分間体操をしてから朝食を摂り、大学へ行く日は、家族の車で最寄り駅まで送ってもらいます。

出勤日の昼食はなるべく学食で摂るようにし、魚中心のA定食をよく選びます。というのは、多くの日本人は、健康に必須の脂肪酸であり魚介類に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)が遺伝子的に不足しがちだからです。

理想的な摂取量は1日100グラムですが、それくらいの魚介類を毎日食べることで、特に認知症のリスクを大幅に低下させることができることが分かっています。にも拘らず、日本人の魚介類の摂取量は年々減少し、近年では50グラムほどになり、90年代と比べて半分に減ってしまいました。

そして昼食後は、大学の研究室のソファで、1時間ほど昼寝をしてから午後の仕事に臨みます。

帰宅はその日によって異なりますが、基本的には夜11時半頃には眠るようにしていますので、昼寝の時間を合わせると、1日の睡眠時間は7時間半くらいです。

OECDの調査(令和3年)によれば、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、世界平均の8時間28分と比べて短く、OECD諸国の中では最短です。睡眠不足はうつ病や認知症のリスクに繋がることが分かっていますから、日本人はもっと睡眠の大切さを認識する必要があるでしょう。

運動に関しては、……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~
◇93歳 生涯現役の秘訣
◇激動の時代の中で医の道を目指す
◇朝ごはんが心身の活力源になる
◇医療費が県内最低に――坂戸葉酸プロジェクト
◇これから求められるのは「精神の栄養学」

プロフィール

香川靖雄

かがわ・やすお――昭和7年東京生まれ。東京大学医学部医学科卒業後、聖路加国際病院、東京大学医学部助手、信州大学医学教授、米国コーネル大学客員教授、自治医科大学教授、女子栄養大学大学院教授を歴任。現在、自治医科大学名誉教授、女子栄養大学副学長。平成8年紫綬褒章、18年瑞宝中綬章受章。『老化と生活習慣』(岩波書店)『香川靖雄教授のやさしい栄養学』『92歳、栄養学者。ただの長生きではありません!』(共に女子栄養大学出版部)など著書多数。


編集後記

日本は世界一の長寿国。ただ、「健康寿命」となると平均寿命より10歳ほど低いのが現実です。そんな中、93歳のいまもなお現役で活躍する栄養学者・香川靖雄さんに、ご自身の実践と最新の研究成果を交えて、健康長寿を実現する生活習慣や心のあり方を探っていただきました。

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