3 月号ピックアップ記事 /生涯現役
心のときめきを忘れない 瓢家小糸(円山町花柳界 芸者)

円山町花柳界(東京都渋谷区)にて、現役芸者として活躍を続ける瓢家小糸さん、96歳。死を覚悟した過酷な戦争体験を乗り越え、70年以上にわたり芸の一道を歩み続けてきた小糸さんに、年齢を重ねて初めて見えてきた世界、いつまでも心の若さを失わない秘訣を教えていただいた。
【写真=円山芸者の喜利家鈴子さんと共に芸を披露する小糸さん(右)】

心のときめきさえ忘れなければ、別におしゃれをしなくたって、いまの自分のままで絶対に楽しい充実した人生が送れます
瓢家小糸
円山町花柳界 芸者
──小糸さんは、九十六歳になるいまも円山町花柳界(東京・渋谷)の現役芸者としてご活躍です。
〈小糸〉
96歳になったからといって特別なことは感じませんし、年齢なんて考えたこともない。全然普通にしています。ただ昔、心筋梗塞をやったことがあって、ちょっと動悸がしたら、「やっぱり90歳かな」って思う。具合の悪い時だけ年齢を前に出すんです。
──芸の道においては、年齢を重ねていくにつれ、初めて分かってくることもあるのでしょうか。
〈小糸〉
それはありますね。世の中のことはもちろん、人の心も透視するようによく見えるようになりました(笑)。お三味線や小唄も、お稽古が辛くてどれくらい泣いたか分かりませんけれども、好きでやってきたことですから、嫌だと思ったことはありません。
どんなお稽古事も、好きだったら長く続けたほうがいいんですよ。すると年を重ねるにつれ、その芸の味わいが分かってくる。そうするとまた楽しさが増してくるんです。
──長く続けることで芸の味わいが分かり、それがさらに芸に打ち込む原動力になっていく。
小糸 若い頃は、ただ弾いて唄えばいいと思っていました。でもいまは、……(続きは本誌をご覧ください)
~本記事の内容~
◇年を重ねることで、見えてくるものがある
◇花柳界の衰退は日本文化の衰退に繋がる
◇戦禍を乗り越え芸者の道を歩む
◇戦後日本のよき時代を芸者として駆け抜ける
◇何歳になっても心のときめきを忘れない
プロフィール
瓢家小糸
ひさごや・こいと――昭和4年東京生まれ。6歳から三味線の稽古を始め、20歳で芸者の世界に入る。以後、五反田、浜町、神田、神楽坂などの花柳界をわたり、50年頃から円山町花柳界(東京都渋谷区)に在籍し現在に至る。
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