3 月号ピックアップ記事 /鼎談
我らかく経営せり——企業繁栄への道 青谷洋治 (坂東太郎会長) 河原成美 (力の源ホールディングス会長) 渡邊直人 (王将フードサービス社長)

消費の低迷をものともせず、個性溢れる経営で躍進を続ける外食の雄がいる。和食レストランのばんどう太郎をはじめ様々な業態の店を展開し、北関東に盤石の礎を築いた青谷洋治氏。豚骨ラーメンの一風堂で世界進出、株式上場を成し遂げた風雲児・河原成美氏。そして不慮の死を遂げた前任社長の志を継ぎ、餃子の王将で年商1千億円を実現した渡邊直人氏。彼らはいかなる道を経て功を成してきたのか。互いを認め合う3人が語り尽くす経営への思い──。

起こった事実をどう捉えるかで、結果は変わる。どんな試練も、前向きに取り組めば何とかなるものです
渡邊直人
王将フードサービス社長
〈河原〉
きょうは新年早々にこういう機会をいただいて、大変嬉しく思います。青谷さんと渡邊さんからいろんなことを吸収するぞと思ってやってまいりました。
〈青谷〉
私もお二人とお話しするのを楽しみにしていました。少し緊張もしていますけれども(笑)。
〈渡邊〉
私は毎年致知出版社の新春特別講演会に通わせていただいているんですが、そこでいつも講演を拝聴している藤尾社長から、こういう鼎談の機会をいただけるとは考えてもみませんでした。思いは叶うんですね。
〈河原〉
それにしても「餃子の王将」はすごいですね。どこのお店も大行列ですよ。
〈渡邊〉
ありがたいことです。特に昔からずっと王将を支え続けてくださった50代、60代のお客様は、大切にしなければあかんと思っています。
〈青谷〉
今年で何年になりますか。
〈渡邊〉
創業58年目になります。私が社長になって11年経ち、この頃では後継者をどうするんやと言われます。属人的な経営もよし悪しですが、こんな時代だからこそ強いリーダーシップを持った人間がやらなければと思うんです。話し合いや多数決ばかり繰り返しても経営なんかできませんからね。

「いいことはおかげさん、悪いことは自分のせい」そう決めておけば、迷うことも挫けることもありません
河原成美
力の源ホールディングス会長
〈河原〉
おかげさまで当社は今年創業46年、ラーメン専門店の「一風堂」を始めてからちょうど40年の節目を迎えます。それをコロナ禍が落ち着いて世界中に新たな門が開き始めたタイミングで迎えることができたところに深い意味を感じています。
コロナ禍の時は非常に苦しい思いをしましたが、随分勉強にもなりました。40年やってきて、それなりに基礎は固めてきた。ただ、その基礎が疎かになってしまっている部分もある。反省しきりです。でも神様は偉い。ここで我われに40周年を与えてくれた。次の50周年まであと10年ある。10年あればどんなふうにも変われるぞと。
〈渡邊〉
河原さんはラーメンという事業で上場を果たされたり、海外へ進出なさったり、これまでもいくつも革命を起こしてこられましたね。
〈河原〉
ありがたいことに、Yelpという世界32か国で展開されている口コミサイトのランキングでは、全米のレストランで1位になったこともあります。ラーメンだけでなく、すべてのレストランの中での1位ですから嬉しかったですね。
〈青谷〉
いまどのくらいお店があるのですか。
〈河原〉
15か国・地域で293店舗を運営しています。
これまでは中間層のちょっと上のところのお客様に多くご利用いただいてきましたが、これからはアジアで中間層のど真ん中のゾーンの方々を中心に、いまや日本食を代表するメニューの一つにもなったラーメンを、お寿司などの他の日本食と一緒に紹介していきたいですね。さらに世界に出て行くぞと心を燃やしています。

大きな問題に直面した時は「おっ、来たな」と思うことにしています。問題はもっと成長する機会を与えてくれるのです
青谷洋治
坂東太郎会長
〈河原〉
青谷さんは、和食レストランの「ばんどう太郎」など、いろんな業態のお店を運営されていますが、どのお店も超地域密着ですよね。その月に地元で行われた行事を撮影して店内にたくさん飾ってあるのを拝見しましたけど、とても新鮮でした。
〈青谷〉
おかげさまで、今年創業50周年の節目を迎えることができましたが、小が大に勝つと申しますか、当社のような小さい会社が勝つには、大手さんがやらないことをやるしかないという思いで、いろんなことに取り組んできました。
特にうちが追求する大家族主義なんて、いま時何をやっているのかと(笑)。私どもは当たり前のことを当たり前にやっているつもりなんですが、傍目には変わった会社に見えるかもしれませんね。
〈渡邊〉
いや、時代はまさに坂東太郎さんが志向される道に回帰していると思いますよ。外食産業は、長らく売る側の理屈で合理性、生産性、効率化ばかり追い求めて、忘れてはならない大切な部分を忘れ去ってきたと思うんです。
けれどもこれからは、ちょっと手間はかかるけど、昔ながらの温かいアットホームな雰囲気を求める気運がワーッと盛り上がってくるような気がしています。古きよきものが進化して復活してくる。私はそう考えているんです。
〈青谷〉
日本という国の本来のありようが、日本の強みだと私は思っています。日本人の最もあるべき姿が大家族主義であって、それを大事にする会社が増えていかないと日本はよくならないというのが私の思いなんです。
私たちが追求してきたのは……(続きは本誌をご覧ください)
本記事の内容 ~全10ページ(約14,000字)~
◇大変化の時代に求められる強いリーダーシップ
◇常に新しく、新しく挑戦を続けていく
◇まずは働く人を元気にすること
◇創業者が語る夢に強く惹かれて
◇起こった事実をどう捉えるか
◇お客様を大切にし社員を幸せにする
◇無我夢中さが自分をここまで運んできた
◇人が十年でやるところを三年でやる
◇創業の原点を忘れてはならない
◇価値をつくり出すのはあくまでも人
◇きょうできることを精いっぱいやり切れ
プロフィール
青谷洋治
あおや・ようじ――昭和26年茨城県生まれ。42年中学卒業後、家業の農家を継ぐ。46年農業から飲食業に転身して3年半の修業を積み、50年茨城県境町に一号店を開店。61年㈱坂東太郎設立、社長に就任。平成28年より現職。著書に『代々初代』(致知出版社)。
河原成美
かわはら・しげみ――昭和27年福岡県生まれ。54年にレストランバーを開店。60年「博多一風堂」をオープン。平成9年TVチャンピオンの「全国ラーメン職人選手権」優勝後、3連覇達成。22年全米の「TOP10Restaurants」(Yelp)で1位を獲得。著書に『博多一風堂 河原成美 凡人が天才に勝つ方法』(PHP研究所)など。
渡邊直人
わたなべ・なおと――昭和30年大阪府生まれ。54年桃山学院大学を卒業後、王将チェーン(現・王将フードサービス)に入社。関東エリアマネージャー、常務を経て、平成25年前社長の大東隆行氏の死去に伴い、社長に就任。原材料の国産化や最新鋭の餃子製造機械を備えた東松山工場の建設をはじめとした経営改革を断行し、一層の躍進を遂げる。
編集後記
長年にわたり『致知』をご愛読、弊社の新春特別講演会に毎回お越しくださっている3名の経営者がプライベートでも懇意にし、人間学談義に花を咲かせたと伺い、本鼎談が実現しました。ばんどう太郎の青谷洋治さん、一風堂の河原成美さん、餃子の王将の渡邊直人さんは皆、同世代で外食産業の雄。幾多の逆境や試練を乗り越え成功を収めてきた人ならではの人間的魅力や気概が伝わってきます。

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