自主性重視の指導で選手の可能性を開く 米田勝朗(名城大学女子駅伝部監督)

個性の異なる複数のランナーが襷を繋いで勝敗を競う駅伝。高い総合力が求められるこの競技で無類の強さを発揮し、全日本大学女子駅伝対校選手権大会で史上初の7連覇を成し遂げたのが名城大学女子駅伝部である。ゼロからチームを育ててきた米田勝朗氏は、初めて日本一を実現した後、その成功体験と決別して常勝軍団をつくり上げてきたという。勝ち続けるために大切なことは何か。体験を通じて掴んだ心得に迫った。

大学駅伝は毎年メンバーが変わっていくので、同じことをやっていたら絶対ダメです。いまのチーム、いまの選手に合ったやり方を常に模索して、前進し続けていくことが大事です

米田勝朗
名城大学女子駅伝部監督

──米田監督率いる名城大学女子駅伝部は昨年、全日本大学女子駅伝で7連覇、富士山女子駅伝で6連覇と、いずれも史上初の快挙を見事に成し遂げられましたね。

<米田> 
ありがとうございます。勝つ度に連覇への期待も増していきますから、レースの後は喜びよりも安堵感のほうが大きいですね。あぁ、終わったと(笑)。

──他チームを寄せ付けない強さの秘密は何でしょうか。

<米田> 
使いたい選手を、毎年きちんと使えたということですね。
 
駅伝は区間によって距離も違いますし、高低差もあります。そして選手の中にも、平坦な道は強いけど上りは弱いとか、いろんなタイプの子がいる。うちのチームにはいま約20人の部員がいますけど、トータルで結果を出すためには、一人ひとりの特長をうまく引き出してベストなオーダーを組むことが大事です。特に軸になる選手が走れなくなるとチームの成績に大きく左右しますから、とにかく怪我をせずに、狙った試合にしっかりピークを合わせていくことがポイントですね。
 
その際に私の30年間の指導経験を元に導いていく部分もありますが、うちの部では私が全部をコントロールするのではなく、学生たち一人ひとりが自分で自分の体をコントロールすることを重視しているんです。

──監督が導くだけでなく、選手自身の自己管理も大事なのですね。

<米田> 
難しいですけれどもね。とにかく繰り返し言い続けて理解させるしかありません。なぜ体を絞らなくてはならないのか、なぜいろんな誘惑に負けないように気持ちをコントロールしなくてはならないのか。自分たちがやっている競技を、その楽しさ、厳しさも含めていかに深く理解させるかが大事だと思います。……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~
▼自己管理できない選手は通用しない
▼笑顔で頑張っていたら周りの人が助けてくれる
▼先輩の頑張りを決して忘れてはならない
▼「もう名城大は終わった」と揶揄される中で
▼「助けてあげたい」と思われる人間力を

プロフィール

米田勝朗

よねだ・かつろう――昭和43年宮崎県生まれ。日本体育大学卒業、同大大学院体育学研究科修士課程修了。弘前大学大学院医学研究科博士課程(医学)修了。平成6年名城大学に赴任。助手、講師、助教授、准教授を経て教授に就任。その傍ら女子駅伝部を立ち上げ、11年の全日本大学女子駅伝対校選手権大会で初入賞、17年には東海地方の大学では初の優勝を飾る。令和5年、全日本大学女子駅伝対校選手権大会7連覇という前人未到の記録を打ち立てる。名城大学法学部教授。医学博士。


編集後記

全日本大学女子駅伝対校選手権大会で史上初の7連覇を達成した名城大学女子駅伝部。その強さの秘訣は、選手自ら考え、行動する自主自立の指導法、チームづくりにありました。ゼロからチームをつくりあげてきた米田勝朗監督のお話には、勝ち続ける選手、組織を実現する要諦に満ち溢れています。

2024年7月1日 発行/ 8 月号

特集 さらに前進

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