嫌われても、拒否されても、手を差し伸べずにはおれない 西田好子(メダデ教会牧師)

日雇い労働者や野宿生活者が多く住む大阪市西成区のあいりん地区。商店街の路地裏にあるメダデ教会の西田好子さんは型破りの牧師として有名だ。野宿生活者や薬物中毒者、前科のある人たちに次々に声を掛けて伝道。信仰を通して彼らの人生や生活を立て直してきた。教師から転身した女性牧師を駆り立てるものは何か。人々の救済のためにきょうも前進を続ける西田さんにお話を伺う。

一人を救うのに時間がかかるし、ものすごい努力がいる。裏切られることもある。

でも、努力がいる代わりに救えた時の喜びは何ものにも代えがたいものがあるんです。努力もせんとな、絶対に人は救えません

西田好子
メダデ教会牧師

――西田牧師が取り上げられたNHKの1時間番組を拝見しました。様々な事情を抱えながら教会に通う信徒さんたちと、全力で向き合い、生きる勇気や希望を与えられる姿に圧倒されました。

〈西田〉 
私の人生を語らせてもらったんやけど、あの番組、すごく評判がいいみたいでね。何度も再放送されています。番組を見た途端、西成の私の教会にパーッと飛んできて感動を伝えてくれる人が何人もいてはりました。ほとんどテレビ見いへんけど、私も放送を見た時は気がついたら泣いていたね。

――ご自身が泣かれていた。

〈西田〉
説教するのでも自分が感動しないような説教したって意味がない。自分の心が動かされるから相手にも伝わるんです。誰かの言葉を借りて喋っても、相手の心が動きますか。そうでしょう? 

ギリシア人の心を捉えるにはギリシア人になれと『聖書』に書いてあるけど、西成のおっさんの心を捉えようと思ったら西成のおっさんにならなあかんのです。その人のことを知らなかったら伝道はできませんよ。

だから、私はいつも信徒のおっさんたちと一緒。牧師が宝石ジャラジャラで金ピカ衣装でええもん食うていたら、誰がついてきますか? 私が毎日口にするのは24時間営業の激安スーパーの特売品と近くの喫茶店でただでもらうパンの耳。家は冷房も暖房も入れない。そうやって貯めたお金は教会の運営費に充てています。

半額、割引商品を買うには早朝が狙い目でね。朝四時頃、激安スーパーに行くと、信徒が皆集まってきよる。買い出しに行った後はミーティングや。一人ひとりのその時の状況と一日のスケジュールを確認する。

毎日会うていたら、その子の様子が分かります。いくら「煙草吸うてへん」言うても吸うたと分かる。毎日会っていることで、同じ家族という絆も深まってくるんです。……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~
▼人間、食べ物だけでは生きていくことはできない
▼小学校の教師から牧師の道へ
▼牧師として仕事がなく母親と共に極貧生活
▼元組員の男性の悔い改め
▼「遅いように思えても、失望してはならない」

プロフィール

西田好子

にしだ・よしこ――昭和25年大阪府生まれ。龍谷大学卒業後、滋賀県の小学校教師となる。2児を連れて離婚後、大阪府下の小・中・養護学校で講師として勤務。平成13年関西学院大学神学部3年編入。15年日本基督教団教師となる。24年大阪市西成区にメダデ教会を設立。野外生活者や前科のある人、身寄りのない人々らの救済に当たる。


2024年7月1日 発行/ 8 月号

特集 さらに前進

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