震災を乗り越えさらに前進する【経営の要諦は大義にあり】 小田禎彦(和倉温泉加賀屋代表) 柳内光子(山一興産社長)

「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で、36年連続総合1位という圧倒的な記録を持つ名旅館・加賀屋(石川県)。しかし今年1月に発生したマグニチュード7.6の能登半島地震により甚大な被害を受け、いまも復興に向けた歩みを進めている。その陣頭指揮を執る加賀屋代表の小田禎彦氏と、家業の山一興産を生コンクリートのトップメーカーとして育て上げた柳内光子氏に、体験から導いたリーダーの条件、震災を乗り越え人生・仕事を前進させていく要諦を語り合っていただいた。


旅館業のミッションは、サービスを通じて人々に「よし明日もまた頑張ろう!」という活力を注入することだと思うんです

小田禎彦
和倉温泉加賀屋代表

<柳内> 
小田さん、初めまして。きょうは素晴らしい出会いをいただいて、ありがとうございます。

<小田> 
こちらこそ、きょうはわざわざ金沢までお越しくださりありがとうございます。お会いできることを楽しみにしていました。

<柳内> 
今回の対談のそもそもの仕掛け人は、輪島市の漆芸家・高名秀人光さんなんです。

高名さんとはかねて倫理法人会の関係で親交があったのですが、今回の能登半島地震で大きな被害を受けたと聞きましてね。何か応援ができないだろうかと思い、私が20年前に立ち上げた浦安市倫理法人会の20周年式典にお招きし、そこで全国から集まった会員の皆様から募ったご寄付を壇上でお渡ししたんですよ。

そうしましたら、地元・石川県を代表する名旅館である加賀屋も、いま震災から立ち上がるべく頑張っているからと、ご縁のある致知出版社を通じて小田さんとの対談を企画してくださったわけですね。

我が社に脈々と受け継がれてきたものは何かと考えると、それは社員への愛情だと思うんですね。経営を突き詰めると愛に行き着く

柳内光子
山一興産社長

<小田> 
このような機会をつくっていただいた高名さんには感謝しかありません。しかし、能登ではこれまでも大きな地震は何度かありましたが、今回は振り回されるというんでしょうか、経験したことのないものすごい揺れでした。

しかも、新しい年を迎えた1月1日の午後4時10分、コロナ禍がようやく収まり、辰年の今年は心機一転、頑張ろうと張り切っていたところにやってきましたから、なおのこと衝撃を受けました。
 
ただ、加賀屋にとって不幸中の幸いだったのは、まだ日が暮れる前の時間帯であったということです。そのため、和倉温泉にあるグループ四館合わせて1100名のお客様を迅速に高台の避難場所に誘導でき、寝具やミネラルウォーターなども配布いたしまして、翌朝11時には皆様を大型バスで無事送り出すことができました。

<柳内> 
メディアにも加賀屋さんの対応の素晴らしさが取り上げられていましたね。災害時でも日本一のサービス力が発揮された。日頃から防災訓練はしていたのですか。

〈小田〉 
ええ、毎年新しい社員が入ってきますから、消防署の方などにも協力してもらって、災害時にどうお客様を守るか、訓練はしょっちゅうやっておりました。どんなサービスも同じですが、その日頃の訓練がいざという時にしっかり発揮されたというわけです。

……(続きは本誌をご覧ください)

~本記事の内容~
◇災害時も発揮された加賀屋のサービス力
◇全国からの支援に力を得、復興への道を邁進する
◇お客様の満足を愚直に追求する
◇やるなら一つ返事で――母から伝承したDNA
◇本音でぶつかれば突破できない壁はない
◇時代の風潮になびかずオンリーワンの旅館を目指す
◇出会いはすべて必然 偶然はない
◇力を発揮できる環境を整える
◇経営の根本は社員への愛
◇大義なき人生・仕事は絶対に成功しない

プロフィール

小田禎彦

おだ・さだひこ――昭和15年石川県生まれ。37年立教大学卒業後、家業の加賀屋に入社。専務取締役を経て、54年父の死去を受け社長就任(後に代表)。石川県人事委員、石川県観光連盟理事長、七尾商工会議所副会頭、和倉温泉観光協会会長、能登半島広域観光協会理事長などの公職を数多く歴任。21年石川県産業功労章、23年石川県七尾市文化産業賞受賞など受賞多数。

柳内光子

やない・みつこ――昭和14年東京生まれ。32年家業である内山甚一商店(建材店)に入社。その後、生コンクリート業に進出し、38年実兄と共に内山コンクリート工業(現・内山アドバンス)を創業。44年に生コンクリート・建設資材の総合商社・山一興産の設立に参画、59年社長就任。社会福祉法人豊生会、医療法人社団健勝会、学校法人草苑学園も運営。平成16年浦安商工会議所会頭。19年藍綬褒賞、24年渋沢栄一賞、26年春の叙勲で旭日小綬章を受章。


編集後記

今年1月1日、石川県能登半島を突如襲ったマグニチュード7.6の大地震――。日本を代表する名旅館・加賀屋も甚大な被害を受け、半年が経ったいまなお復旧の途上にあります。その困難に屈することなく前進を続ける加賀屋代表の小田禎彦さんと、人情溢れるリーダーシップで家業の山一興産を生コンクリートのトップメーカーに育て上げた柳内光子さんの表紙対談には、運命を高め、人生・経営の順逆を越えていく生き方の要諦が満載です。

2024年7月1日 発行/ 8 月号

特集 さらに前進

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