8 月号ピックアップ記事 /対談
教育への思い尽きることなし 田村哲夫(渋谷教育学園理事長・学園長) 上甲 晃(志ネットワーク「青年塾」代表)
私立学校の評価が現在ほど芳しくなかった62年前、異業種から渋谷教育学園へ転じた田村哲夫氏は、35歳の若さで理事長、校長に就任するや、様々な学校改革に取り組み、その後創立した中高一貫校を、時を経ずして首都圏屈指の進学校に育て上げた。米寿を迎えたいま、なおも教壇に立ち生徒と向き合う情熱の源は何か。松下政経塾と青年塾を通じて長年人間教育に尽力してきた上甲晃氏に、教育の道をひたすら前進し続ける田村氏の思いに迫っていただいた。
若い世代と日々接していて痛感するのは、言葉をもっと大事にしてほしいということ。
だから、リベラル・アーツや古典をしっかり学ぶことが人間性を取り戻す上では重要です
田村哲夫
渋谷教育学園理事長・学園長
〈上甲〉
ご講話お疲れ様でした。本日聴講されたのは中学3年生の皆さんだそうですが、知的刺激に満ちた素晴らしいお話で、大人の私も思わず聴き入ってしまいました。
〈田村〉
いえいえ、聴いてくれる生徒がいいからこういう話ができるんです。きょうは取材に来られているから皆遠慮していましたけど、いつもは講話が終わると生徒が質問に詰めかけてきて、30分くらい引き留められるんですよ(笑)。
〈上甲〉
先生がこの学園長講話で標榜される「中高生のリベラル・アーツ」は、文系・理系を問わず幅広く学問の基本を身につけることを目的とするもので、教養教育とも呼ばれていますね。
いまの若い人はなかなか聴く機会がありませんが、こういう貴重なお話を学園長自ら88歳のいまも生徒に語り続けておられることに感服しましてね。私のほうから熱望して、『致知』の編集部に対談の場を設けていただきました。
〈田村〉
こちらこそ、ありがとうございます。
私が松下政経塾に在籍した14年間で貫いたのは、誰よりも熱心というこの一点でした
上甲 晃
志ネットワーク「青年塾」代表
〈上甲〉
そもそも私が田村先生にお目にかかりたいと思った一番のきっかけは、娘の本棚にあった貴校を紹介する本を見たことです。
渋谷中学高等学校と幕張中学校・高等学校という2つの中高一貫校と、看護師養成大学・大学院、幼稚園・認定こども園を運営されていること。
そして幕張の学校は「公立王国」と言われた千葉県に1983年に新設され、僅わずか10数年で東大合格者数が県内トップになり「渋幕の奇跡」と注目を集めたこと。
また渋谷の学校は女子校から共学に転換して話題となり、共学化のモデルになったこと。私立学校がまだ十分評価されていなかった時代から大きな飛躍を遂げてこられたことを知って、「こういう学校があるのか」と感銘を受けました。
さらに目を通して衝撃を受けたのが、「自調自考」という貴校の理念でした。私がかつて運営に尽力した松下政経塾の理念「自修自得」と同じではないかと。……(続きは本誌をご覧ください)
~本記事の内容~
◇自調自考と自修自得
◇生徒に話をする度に元気になる
◇共にあることが教育の基本
◇国際色豊かな学校づくりの原点
◇独力で労働争議に臨む
◇誰よりも熱心であれ
◇何もない埋め立て地からのスタート
◇心に届く教育を追求して
◇日本の大学でなぜデモが起きないのか
◇「人間の勉強をしいや」
◇日本独自の生き方を追求していく
本記事では全9ページ(約12,000字)にわたって、田村哲夫さんと上甲晃さんの対談を掲載しています。
プロフィール
田村哲夫
たむら・てつお――昭和11年東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、住友銀行(現・三井住友銀行)へ入行。37年渋谷教育学園理事。45年同学園理事長、58年共学の幕張高等学校、61年同中学校を開校し中高一貫校として校長に就任。その後それまであった渋谷女子中学校・同高等学校を平成11年に共学の中高一貫校として校長に就任。教育改革国民会議、中央教育審議会等の委員を歴任。著書に『伝説の校長講話』(中央公論新社)、訳書に『アメリカの反知性主義』(みすず書房)等がある。
上甲 晃
じょうこう・あきら――昭和16年大阪市生まれ。40年京都大学教育学部卒業と同時に、松下電器産業(現・パナソニック)入社。56年松下政経塾に出向。理事・塾頭、常務理事・副塾長を歴任。平成8年松下電器産業を退職、志ネットワーク社を設立。翌年青年塾を創設。著書に『志のみ持参』『松下幸之助に学んだ人生で大事なこと』『人生の合い言葉』など。最新刊に『松下幸之助の教訓』(いずれも致知出版社)。
編集後記
特集の締め括りは、弊誌でもお馴染みの志ネットワーク「青年塾」代表・上甲晃さんが聞き役となり、渋谷教育学園理事長・学園長の田村哲夫さんとの対談。取材に先立ち、名物授業の学園長講話を拝聴しました。米寿を迎えたいまも自ら教壇に立って年間60回の講話を務め、未来を担う中学生、高校生たちに向けて人生の糧となるリベラル・アーツ教育を実践し続ける姿に、深い感動を覚えます。
特集
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