6 月号ピックアップ記事 /対談
希望は失望に終わらず 佐治晴夫(理学博士) 鈴木秀子(文学博士)
理学博士の佐治晴夫氏は、長年宇宙の摂理を探究する中で、宇宙生成法則が生き方の法則と不思議なほど一致しているという結論を得た。人生で直面する様々な困難や試練もその法則を知ることで解決の糸口が見えてくるという。シスターとして信仰の一道を歩み、多くの人たちを幸せに導いてきた文学博士の鈴木秀子氏と共に語り合う失望を希望に変えていく道とは。
僕はあなたのこれまでがあなたのこれからを決めるのではなく、「あなたのこれからがあなたのこれまでを決める」と表現しています。
これからの歩み方次第で過去の価値はいかようにも変えられる。大切なことは何かを始めるのによい時期、悪い時期というのはないということですね
佐治晴夫
理学博士
〈佐治〉
人生はすべて出会いによって決まると僕は思っているんです。そこで思い出すのは、19世紀の免疫学の権威ルイ・パスツールです。彼がパリの大学の学長に就任した時の記念講演の記録が残っているのですが、こう言っているんですね。
「偶然という幸運の女神は、準備された心にのみ降り立つ」と。これと似た言葉が『新約聖書』のルカ伝にあることも後に知りました。
「腰に帯を締め、灯りをともしていなさい。思いがけないときに人の子は来るからである」です。これは僕が好きな聖句ですね。
ここで大事なことは、その出会いがよかったか悪かったかは、その時には分からないということです。
だから、それぞれの出会いは大切にしていかなきゃいけない。ケースにもよりますが「この出会いはよさそうだから」とか「これはあまりよくない」とか自分の価値観で判断しないことです。
〈鈴木〉
その通りですね。出会いに偶然はなく、必ず何らかの意味がありますから。
〈佐治〉
自身の歩みを振り返っても、社会的地位の高い人との出会いもあれば、そうでない人との出会いもありました。しかし、たとえ地位や財産には恵まれなくても、非常に大きなインパクトを受けた方は少なくありません。
患難も忍耐も一見辛いことのように思えますが、それがないと私たちは我がままな人間になってしまいます。
忍耐することで人間が練り上げられ、後に自分に思いがけないほどの力がついてきていることに気づく日がやってくるんです。再び同じような試練に直面したとしても、力強く乗り越えることができるんです
鈴木秀子
文学博士
〈鈴木〉
佐治先生とはNHKの文化講座などで何度もご一緒させていただいていますのに、こうしてじっくりお話しする機会は初めてですね。先生のご専門の宇宙や量子力学について私は全く分からないのですが、なぜか量子力学に強く惹かれるものがあるんです。それで私もきょうはお会いできるのを楽しみにしていました。
〈佐治〉
最初にお目に掛かったのは、確か先生がエニアグラムを日本に広められていた30年以上前だったかと記憶しています。その後、僕も関わりができた龍村仁監督の『地球交響曲』の上映会で一緒にお話をさせていただいたり、日本野鳥の会でお会いしたりしていました。
鈴木先生のご著書を拝見していますと「人生で起こるすべての出来事をよきものとして受け容れる」というようなお言葉がたびたび出てきます。これは現代宇宙論の考え方にも通じるものであり、以前から共感していたんです。
……(続きは本誌をご覧ください)
◇大きな希望ではなく小さな希望を
◇人生はいま、この時を生きていくこと
◇戦争体験と人生を変えた出会い
◇幸運の女神は準備された心に降り立つ
◇宇宙は一粒の光から生まれた
◇すべての宗教に共通するもの
◇あなたのこれからがあなたのこれまでを決める
◇試練の意味は後になって分かる
◇小さな思いと行動が世の中を変える
プロフィール
佐治晴夫
さじ・はるお――昭和10年東京生まれ。東京大学物性研究所、ウイーン大学などで研究し、玉川大学教授、県立宮城大学教授、鈴鹿短期大学学長などを歴任。平成26年に神奈川県から北海道美瑛町に拠点を移し、28年同町郷土学館「美宙」天文台長に就任した。〝ゆらぎ〟の理論研究で知られる一方、宇宙研究の成果を平和教育の一環と位置づけるリベラルアーツ教育の実践を全国的に展開している。著書は『14歳のための宇宙授業』(春秋社)『詩人のための宇宙授業』(JULA出版局)など多数。日本文藝家協会所属。
鈴木秀子
すずき・ひでこ――東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。聖心女子大学教授を経て、現在国際文学療法学会会長、聖心会会員。日本にエニアグラムを紹介。著書に『自分の花を精いっぱい咲かせる生き方』『幸せになるキーワード』(共に致知出版社)『悲しまないで、そして生きて』(グッドブックス)など多数。最新刊に『名作が教える幸せの見つけ方』(致知出版社)。
編集後記
「この世界に単独で存在し得るものは何一つとしてない。人間はお互いに認め合い、生かし合っていかなくてはいけない」。宇宙の摂理を長年探究する中で、理学博士・佐治晴夫さんが至った人生観です。これは宗教の教えとも通底しています。文学博士でシスターとして活動を続ける鈴木秀子さんとの対談に興味は尽きません。
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