セイコー創業者・服部金太郎の生き方に学ぶ 楡 周平(作家)

世界的時計メーカー・セイコー。その創業は明治期の1881年、創業者である服部金太郎が東京・京橋に開いた服部時計店に端を発する。金太郎はいかにして僅か一代でセイコーを世界に伍する会社へと飛躍させたのか。多くの災難を福に変えていった金太郎の歩みや信条を、『黄金の刻 小説服部金太郎』の著者である作家・楡周平氏にお聞きした。

服部金太郎

1860(万延元)年~1934(昭和9)年。時計商を志し、亀田時計店などに勤務。1877年に独立し、1881年に服部時計店を創立。1885年には舶来時計の販売を始め、1892年精工舎を創立し時計の製造に着手。国産時計製造業の発展に尽くし、欧米に輸出した。1924年SEIKOを商標として使用。1927年勅選貴族院議員。赤十字をはじめ各種社会事業に貢献した。(写真:国立国会図書館HP)

「あの失敗や挫折があったのは、いま自分がこういう道に来るためだったんだ」と後々思える人の人生は、とても幸せなのではないでしょうか。

僕が服部金太郎に思いを馳せる時、まず頭に浮かぶのはそのことです

楡 周平
作家
(写真撮影:弦巻勝)

2021年に集英社から刊行した『黄金の刻 小説服部金太郎』は、最近、テレビ朝日でドラマ化されたこともあって多くの読者から感動の声が寄せられています。ただ、誤解を恐れずにいえば、この作品はどこまでも僕の創作です。

推理作家である僕にとっては実在の人物をモチーフに小説を書くのは初めての挑戦でした。「服部金太郎氏について書いてほしい」と出版社から名指しで依頼を受けた時、創作でいいというお話だったからお引き受けできたんです。

もちろん、執筆するに当たっては多くの資料に丹念に目を通しましたが、実際、どのような会話のやりとりがあったかなんて誰にも分からないわけだし、なぜ時計商を志したかなど調べても何も資料が残っていない。

それぞれのシーンで多分に僕の想像が入っているんですね。だから、セイコー創業者としての史実には基づいているけれども、生涯を忠実に反映した伝記というわけではないんです。

しかし、金太郎氏の足跡を知り、執筆を進めるうちに、彼のスケールの大きさに次第に圧倒されていく自分がいました。

金太郎氏の人生は幼少の丁稚奉公に始まり、独立後の店舗の火災、離婚、同業者との軋轢、揚げ句には関東大震災で店舗や工場が焼失するという大変な試練に直面します。普通ならそこで立ち直れなくなってしまうはずですが、面白いことに金太郎氏はこれらの試練をすべてプラスに変えて、事業をさらに大きく発展させていくんです。

……(続きは本誌にて)

 ▼試練をチャンスに変えた服部金太郎
 ▼貯めた給金を返し店主の恩に報いる
 ▼チャンスは準備した人のみが掴める
 ▼震災で見せた従業員との深い絆
 ▼出来事には意味があると信じて歩み続ける

プロフィール

楡 周平

にれ・しゅうへい――昭和32年岩手県生まれ。慶應義塾大学大学院修了。米企業在職中の平成8年に発表した国際謀略小説『Cの福音』がベストセラーになり、一躍脚光を浴びる。9年退社し、執筆活動に専念。朝倉恭介を主人公としたシリーズや、『無限連鎖』(文藝春秋)などサスペンス小説のほか、『再生巨流』(新潮社)など経済小説を手掛ける。近著に『ショートセール』(光文社)『ラストエンペラー』(KADOKAWA)。


編集後記

個人で創業した時計店を一代で世界的時計メーカーに育て上げた服部金太郎。あらゆるピンチをチャンスに変えた名経営者に学ぶべきことを、作家の楡周平さんにお話しいただきました。

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