6 月号ピックアップ記事 /インタビュー
人生のハンドルを握り扉を開けられるのは自分だけ 中島伸子(井村屋グループ会長CEO)
明治29年の創業以来、128年の歴史を刻んできた井村屋グループ。
数多くのロングセラーを手掛け、年間3億本を販売する看板商品「あずきバー」は昨年50周年を迎えた。
その背景には「人こそ宝」の創業精神が脈々と受け継がれてきた企業風土があるという。
こう語るのは、アルバイト出身から同社初の女性社長に抜擢された中島伸子さんだ。
女性の社会進出が難儀だった時代の中で、幾度も試練やハンディキャップを克服、道なき道をひらいてきた。
波瀾万丈な仕事と人生の歩みを辿ると共に、経営理念を浸透させ、社員を育成し、チームの心を一つにする秘訣に迫る。
自分の人生のハンドルは自分しか握れない。
目の前に大きい壁が立ち塞がる時は壁に扉の絵を描く。
扉の鍵は自分が持っている。
心の中から鍵を引っ張り出して、扉を開けていく。
その力強さがあればどんな困難にも立ち向かうことができる
中島伸子
井村屋グループ会長CEO
――井村屋グループのHPを拝見し、「ミッション(社会的使命)」「ビジョン(ミッションを果たす道程)」「パッション(情熱、心意気、行動)」の3つから成る理念に感銘を受けました。
〈中島〉
これは2010年にホールディングス制に移行した時につくったものなんです。我われは国内5社、海外3か国6社の計11グループ、従業員数約930名を擁し、あずきを中心に和菓子・冷菓・食品・点心・スイーツなどの事業を展開しており、おかげさまで連結の売上高は446億円、経常利益は22億円(2023年3月期)となっています。
まずミッションは「おいしい!の笑顔をつくる」。これを国内だけではなく世界に広めたい、日本の食文化の素晴らしさをグローバルに知ってほしいという思いで日々邁進しています。あずきは縄文時代の遺跡から出土されているように古来日本人に馴染みがありますし、おめでたい時にお赤飯を食べるなど、日本の伝統行事や文化と深く結びついているんです。
次にビジョンは「Be always for Customers!」。社員一人ひとりが常にお客様の立場に立ってお客様のことを意識し、行動しようと。そして、パッションの原点は「イノベーション(革新)」の発揮にあると考えています。
我われはメーカーですから安全安心な商品を当然お届けしなければいけませんが、そのためには、お客様が笑顔で幸せになられている場面を想像してよい商品づくりをしなさい、と社員によく言っているんですね。社員自身が幸せを感じながらつくっている商品であれば、きっとお客様に幸せをお届けできる。
ですから、お客様のことを想定しているだけではなく、自分たちもやりがいをもって働いていく。そこが大事だと思っています。
――理念をいかにして現場に浸透させておられますか?
〈中島〉
理念やパーパス(企業の存在意義)って何となく掲げて言葉が独り歩きする場合がよくありますけど、それでは意味がありませんので、一人ひとりの社員が自分の腑に落ちるようにしています。一例を挙げると、
……(続きは本誌をご覧ください)
◇ミッションは「おいしい!の笑顔をつくる」
◇いかに社員を育てチームの心を一つにするか
◇「特色経営」と「不易流行」の追求
◇「あずきバー」が年間3億本売れる秘訣
◇20歳の直前に運命を大きく変えた事故
◇「自分だけの〝プラス1〟」父の手紙を心の支えに
◇目を覚まされた3時間の説教
◇仕事の師・浅田剛夫から受けてきた薫陶
◇アルバイトから経営者へ その源泉にあるもの
◇今期の経営メッセージと大切にしている二つの信条
本記事では全8ページ(約12,000字)にわたって、井村屋グループ会長CEO・中島伸子さんのインタビューを掲載しています。
九死に一生を得る壮絶な体験を乗り越え、アルバイト出身から同社初の女性社長に抜擢された中島さんが語る「希望を失わずに生き抜くヒント」とは――。
2023年、発売50周年を迎えた「あずきバー」
〈提供=井村屋グループ〉
プロフィール
中島伸子
なかじま・のぶこ――昭和27年新潟県生まれ。50年豊岡女子短期大学教育学部卒業。井村屋製菓(現・井村屋グループ)福井営業所でのアルバイトを経て、53年正社員として入社。経理課長、福井営業所長、北陸支店長、関東支店長、常務取締役総務・人事グループ長、専務取締役などを歴任し、平成31年代表取締役社長に就任。令和5年より現職。
編集後記
表紙並びにトップインタビューを飾っていただいたのは井村屋グループ会長CEOの中島伸子さん。4月4日(木)、期首の慌ただしい最中にも拘らず、三重県津市の本社を訪ねると、中島さんは笑顔で私たちを迎えてくださいました。2時間に及ぶ取材を通して、アルバイト出身から初の女性経営者となった所以や人間的魅力、同社が約130年発展し続けてきた要諦を感じ取ることができました。
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