九十路、我らなお人生に挑まん 丸茂伊一(スピードスケート選手) 滝野文恵(ジャパンポンポン代表)

94歳にして現役スピードスケート選手であり、世界最高齢のスピードスケーターとしてギネス認定もされている丸茂伊一さん。64歳の時にシニアのチアリーダーチームを立ち上げ、91歳のいまも約30名のチームの代表として舞台に立ち続ける滝野文恵さん。生気溌剌と挑戦を続けるお二人に、九十代という老年の時代をどう拓くか、縦横に語り合っていただいた。

趣味でも仕事でもやるべきことがあるのはありがたい。それが生命力の維持になっている

丸茂伊一

私も自分の生きる道は自分で切り拓くしかないと思っています。当然他人様の力もお借りするけれど、それも本人の努力があってこそ花開くもので、最後は自分次第。

農作業をしていた時に組合活動に力を入れなければ市議会議員に当選しなかったでしょうし、市議会議員になっていなければ国際スケートセンターの新設を提案せず、この歳までスケートを続けなかったでしょう。

私は90歳になったら人生最後のまとめ仕事をしようかと考えていたけれど、いまはまとめ仕事どころじゃない。何しろあれこれやらなければいけないことがいろいろあるからね。でもそれが生命力の維持になっている。趣味でも仕事でも、やるべきことがあるのは何ともありがたい話ですね。

老いてなお輝きを増す人と老いて衰えてしまう人の差はやる気だと思います

滝野文恵
ジャパンポンポン代表

私はこれまでいろいろな方を見てきましたが、老いてなお輝きを増す人と老いて衰えてしまう人の差ってやる気だと思うんです。

実は一時期、チアの活動でいろいろトラブルが起こり、深刻に辞めようかと考えたことがありました。それでしばらく一人で考えていたんですけど、なぜチアの活動を続けているのかと言ったら、楽しいからなんですね。体を動かして踊るのも楽しいですし、見た人に勇気や元気を与えられるのも嬉しい。純粋に、自分の人生を楽しくするためにやっているのだと気づいて、辞めようという考えをやめました。ですから丸茂さんの考えに同感で、自分のやりたいことをやることはすごく大事です。

プロフィール

丸茂伊一

まるも・いいち――昭和4年長野県生まれ。旧制中学を卒業後、陸軍特別幹部候補生となり、15歳の時に終戦を迎える。復員後は実家に戻り農業に従事。45年NHK全国優秀農業(現・日本農業賞)に選ばれ、農林大臣賞を受賞。同年秋には第9回農業祭において天皇杯を受ける。62年から3期にわたり地元茅野市の市議会議員を務めた。趣味で続けていたスケートは85歳から全国大会に出場するようになり、令和5年には最高齢のスピードスケート選手としてギネス記録に登録されるなど、数々の記録を打ち立てている。

滝野文恵

たきの・ふみえ――昭和7年広島県生まれ。関西学院大学卒業後、1年間アメリカ留学。25歳で結婚、1男1女を授かる。53歳の時にアメリカノーステキサス大学で老年学修士号を取得。帰国後、アメリカにシニアチアリーダーチームがあると知り、平成8年63歳で「ジャパンポンポン」を設立。91歳の現在も現役で踊り続けている。著書に『女53歳からのアメリカ留学』(ミネルヴァ書房)『85歳のチアリーダー』(扶桑社)など。


編集後記

いまも自ら車を運転し、パッと小走りできるほど身軽な現役スピードスケーターの丸茂伊一さん。スマホもパソコンも使いこなし、移動中はキンドルで読書をしている現役チアリーダーの滝野文恵さん。本当に九十代だろうかと目を見張るほど矍鑠としたお二人の姿、今日に至るまでの挑戦の軌跡に、人生百年時代を生き抜くヒントを学びます。

2023年8月1日 発行/ 9 月号

特集 時代を拓く

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