新エネルギーの創出に挑む 沼田昭二(町おこしエネルギー会長兼社長) 濵田総一郎(良知経営社長)

独自の製造・販売一体型のビジネスモデルを構築し、右肩上がりの成長を遂げる業務スーパー。創業者の沼田昭二氏は現在、経営母体である神戸物産の経営から離れ、地熱発電を柱とした再生可能エネルギー事業に取り組んでいる。その決断の背景にあるのは日本のエネルギー自給率、食料自給率を何とか向上させたいという氏の大義である。一大事業に不退転の決意で臨む沼田氏の歩みや仕事観を、沼田氏と共に事業を展開している良知経営社長・濵田総一郎氏にお聞きいただいた。

私は50歳の時にステージ4の甲状腺がんになりましてね。この時、ちょっと願掛けをしたんです。「私利私欲を捨てて滅私奉公に生きる」と。

私は業務スーパーの創業者として500回以上、海外に行く中で日本の食糧自給率が低すぎること、純国産エネルギーについては12%しかないことに危機感を感じてきました。そこで純国産エネルギーと町おこし、地方創生を融合していくことを大義とした会社を立ち上げたいと考えていたんです

沼田昭二
町おこしエネルギー会長兼社長

〈沼田〉
濵田さんとは、もう長いお付き合いですね。

〈濵田〉 
私が業務スーパーのフランチャイズ加盟店になったのが2004年だから、かれこれ20年です。最初にお会いして沼田さんのお話を聞きした時は、「こんなとんでもない脳味噌の持ち主がいるのか」と大変衝撃を受けたことをいまも覚えています。

とにかく中国の工場で冷凍食品をつくるにしても、野菜の土壌の質から製造や梱包、輸出にかかるコスト、日本国内での輸送費に至るまで一円単位で全て分かってしまわれる。コスト計算ができるばかりか、事業に必要と思えば、工場から機械から何からすべてを自前でつくってしまわれる。本物のイノベーター、アントレプレナー(起業家)とは沼田さんのような方だと思ったんです。

〈沼田〉 
そこまで言っていただけると面映ゆい限りですが、いろいろな面で小売業界の常識を覆してきたことが業務スーパーの今日の発展に繋がったことは確かですね。ありがたいことに業務スーパーは2000年に1号店をオープンして以来、現在、全国に1000店舗以上を展開し、4000億円以上を売り上げるまでに成長してきました。

沼田さんがなぜこれだけのイノベーションが生み出せるかという理由も、そこに大義があるからだと思うんです。

大義がすべて公益に資するものであるからこそ実現していく

濵田総一郎
良知経営社長

〈濵田〉 
文字通り右肩上がりの大飛躍ですよね。特に2000年代前半は年間に100店舗ほどをオープンしていかれたわけで、この数字も尋常ではありません。

沼田さんとお会いする前、私は関東でお酒と食品のディスカウントショップを店舗展開していました。ところが、2003年の酒販免許の緩和で一気に赤字に転落してしまう。そういう時に沼田さんとご縁をいただいて業務スーパーに業態転換し、起死回生を図ることができました。現在、業務スーパーは我われ良知経営グループの事業の柱でもあり、66店舗を運営し2500人の従業員を雇えるまでになりました。その意味でも沼田さんには大変な恩義を感じているんです。

〈沼田〉
嬉しいですね。

プロフィール

沼田昭二

ぬまた・しょうじ――昭和29年兵庫県生まれ。兵庫県立高砂高校卒業後、三越に入社。56年食品スーパー創業。60年神戸物産設立。平成12年業務スーパー1号店をオープン。以来、フランチャイズ方式で全国展開を図り現在1,000店舗以上を超える。外食産業や全国に20を超える食品工場も運営。28年神戸物産の経営を離れて町おこしエネルギーを設立。食料、エネルギーの自給率アップを大義に再生可能エネルギー事業に取り組む。

濵田総一郎

はまだ・そういちろう――昭和30年鹿児島県生まれ。武蔵大学卒業。東武鉄道勤務を経て帰郷し、家業の立て直しに尽力。平成3年独立してパスポートを創業、社長に就任。令和3年に18社を擁するホールディング体制に移行。良知経営グループの代表を務める。著書に『尊ぶは志』(致知出版社)。


編集後記

2000年の1号店開店以来、全国に1000店舗以上を展開する業務スーパー。創業者の沼田昭二さんは食料、エネルギー自給率アップという大義を掲げ、新たに「町おこしエネルギー」という会社を設立し、巨額の私財を投じて地熱発電事業などに取り組まれています。注目すべきは従来の常識に囚われない発想力と行動力。良知経営社長の濵田総一郎さんにその経営の極意に迫っていただきました。

2023年8月1日 発行/ 9 月号

特集 時代を拓く

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