9 月号ピックアップ記事 /インタビュー
愚直に徹して、その道を進め ——栄東中学・高等学校 改革の軌跡—— 田中淳子 (学校法人佐藤栄学園理事長/栄東中学・高等学校校長)
東京大学をはじめとする国公立大学、早稲田や慶應義塾といった難関私立大学に多数の合格者を輩出し、中学受験志願者数が10年連続1万人を超える進学校、栄東中学・高等学校。その教育改革に創設者の佐藤栄太郎氏と共に奮闘し、今日の確固たる評価を築いてきたのが田中淳子氏である。世界銀行の通訳から教育界に転身した異色の経歴を持つ田中氏に、生徒たちの能力を引き出す教育の秘訣、自らの運命を力強く切り拓いていく要諦をお話しいただいた。
一見無駄だと思われること、つまらないことにこそ可能性を感じ、目標に向かって日々倦(う)むことなく愚直に努力と挑戦を重ねていくことから、生きる力、他人を思いやる心、ひいては総合的な人間力が養われていくのではないでしょうか
田中淳子
学校法人佐藤栄学園理事長/栄東中学・高等学校校長
──田中さんが校長を務める男女共学の中高一貫校、栄東中学・高等学校(埼玉県)は、中学受験の出願者数が10年連続で1万人を超え、これは日本一だそうですね。多くの生徒たちを惹きつける御校の魅力や特徴を教えてください。
〈田中〉
一つには、いろんな生徒が通っていること、その多種多様な生徒たちが、それぞれ個性的な活動をとことん追求できる環境が整っているということです。
例えば、鉄道研究部の生徒たちは、夏休みなどを利用して北は北海道から南は沖縄まで自分たちで出掛けていって、全国の駅の発車メロディを調べ、それをチェロやピアノで演奏しているんですよ。文化祭の時には、山やトンネルまで精巧に造ったNゲージ(鉄道模型)を走らせてね、鉄道マニアが押しかけてきて、生徒が入るスペースがないほどの人気なんです。
あと、クイズ研究部の活動も非常に活発で、TBSの「東大王クイズ甲子園2021」では、300チーム以上がエントリーしている中、栄東高等学校のチームが見事優勝を掴みました。それから、行政書士試験に最年少の15歳で合格した生徒、鮫(ナガサキトラザメ)の研究に没頭して鮫が自宅で孵化する瞬間を世界で初めて映像に収めた生徒、さらに国際地理オリンピックで銀メダルを獲得した生徒や世界水泳ジュニア選手権で世界一になった生徒もいます。
──世界レベルで通用する生徒がどんどん育っていっていると。
プロフィール
田中淳子
たなか・じゅんこ――京都府京都市生まれ。同志社大学文学部英文学科卒業後、世界銀行に就職。通訳兼秘書として東欧を中心としたヨーロッパ各国、アメリカ合衆国などに赴任。帰国後は教員の道に進む。京都、静岡で教壇に立ち、埼玉県では教育委員会の管理職や社会教育施設・青年の家の所長、校長などを歴任。2001年、栄東中学の教頭に着任。2008年12月より栄東中学・高校の校長。2021年4月より同学園の第4代理事長を兼務。
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