8 月号ピックアップ記事 /インタビュー
「人生万事因己」経営者である私の信条 谷田千里(タニタ社長)
世界初の体脂肪計を開発・販売し、体組成計則のパイオニアとして業界を牽引してきたタニタ。創業家の3代目社長を務める谷田千里氏は、「タニタ食堂」「タニタ健康プログラム」をはじめ多面的な事業展開を通して、健康を「はかる」企業から「つくる」企業へと変革を促してきた。そんな氏が抱く覚悟とは――。
結局、実践でしか身につきません。それが私自身の実感です
谷田千里
タニタ社長
――三代目である谷田社長の代で、タニタは健康を「はかる」企業から「つくる」企業へと変革されていると伺いました。
〈谷田〉
弊社は健康計測機器メーカーとして様々な世界初の技術力で業界をリードしてきました。
しかしご存じのように、「タニタ食堂」で栄養バランスの取れた食事を提供したり、「タニタ健康プログラム」といってIoT対応(家電や照明などの機器がインターネットに繋がること)の計測機器を用いた健康づくりパッケージも売り出したりするなど、徐々にモノからコトへとシフトしています。
その経緯を順序立ててお話しすると、私はネガティブから入る人間なので、2008年に社長に就任した際、
「どういう形で次の社長にバトンをパスしたら自分は合格点をもらえるか」
と考えました。会社を潰すのが不合格で、一番いいのが売上も利益も共に上げること。ですが高齢化や人口減少が加速する日本では税率が上がる可能性が高いと予測したので、かなり業績を伸ばさなければ及第点に届かない。
ではそもそもなぜ税率が上がるのか。それは国の社会保障費が増えるからですが、よく考えれば弊社は医療費の適正化に寄与できる製品をつくっています。
将来、自分の子供に「お金を稼ぐために働いた」ではなく、「日本の医療費の適正化のために働いた」と誇りたいですし、そのほうが社員の士気も上がるだろう。そう考えて日本人の健康を「つくる」と打ち出すようになりました。
――〝日本のため〟という大局的な視点を持たれていたのですね。
〈谷田〉
ただ、ここがポイントですが、スタートはすべて自分の都合です。社長としてどんな仕事をすればいいか、現場で働きながら考え尽くした先に思い至ったのがこの考えでした。
【写真は医療機関や健診施設、フィットネスクラブ等で活用されているプロフェッショナル仕様の体組成計(MC-980A-N plus)】
プロフィール
谷田千里
たにだ・せんり――昭和47年大阪府吹田市生まれ。平成9年佐賀大学理工学部卒。船井総合研究所などを経て13年タニタ入社。17年タニタアメリカ取締役。20年5月から現職。著書に『タニタの働き方革命』(日本経済新聞出版)がある。
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