文士 小林秀雄を語る 占部賢志(中村学園大学客員教授)

本誌で「風の便り」を連載中の占部賢志氏が、文芸評論家・小林秀雄の謦咳に接したのは昭和48年、学生の頃だった。以来、半世紀、占部氏は小林秀雄に惹かれ、その思想を探究し続けてきた。今般、弊社から上梓された『文士 小林秀雄』はその結実ともいうべき一書である。氏にとって小林秀雄はどのような存在であり、新著にはどのような思いを込められたのか。

小林さんがどんな対象を取り上げていても、帰するところは、人間および人間の精神の営みへの関心だったと言えます

占部賢志
中村学園大学客員教授

小林さんは、世界にほとんど例を見ない日本語の特色は「訓読」の発明にあると言いました。はるか昔、文字がなく会話だけだった我が国に漢字が渡来して国語を創るのですが、そのまま模倣するのではなく、日本独自の工夫を凝らしています。

一例を挙げれば、「紫」という字は「シ」としか読めないのに、同じ色を日本で「ムラサキ」と言っていたのなら、それを読みとして充てたのです。英語で言えば、deskを「ツクエ」と呼ぶのと同じです。これが訓読です。

小林さんはそこに日本人の言語能力の際だった高さがあると説きます。この能力が、仮名をはじめ豊かな国語を創造したのです。

プロフィール

占部賢志

うらべ・けんし――昭和25年福岡県生まれ。九州大学大学院博士課程修了。高校教諭を経て現職。他に、NPO法人アジア太平洋こども会議・イン福岡の客員講師などを務める。著書に『歴史のいのち』『教育は国家百年の大計』(いずれもモラロジー研究所)『語り継ぎたい美しい日本人の物語』。最新刊に『文士 小林秀雄』(いずれも致知出版社)。


編集後記

中村学園大学客員教授・占部賢志さんにとって、小林秀雄の研究は半世紀続くライフワークです。若き日の邂逅を交え、一般にほとんど知られていない小林秀雄の人柄や思想について語っていただきました。それぞれの逸話や論評から占部さんの師への敬慕の念が伝わってきます。

2022年7月1日 発行/ 8 月号

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