2 月号ピックアップ記事 /対談
日本の教育の危機を救え! 野口芳宏(植草学園大学名誉教授) 榎本博明(MP人間科学研究所代表)
深刻化する学力低下、若者の読書離れ、教育現場の荒廃、迷走する教育行政……。様々な難題・課題を抱える日本の教育は、まさに危機の渦中にある。いかにして日本の教育を立て直し、変化激しい時代を逞しく生き抜く子供たちを育てていけばよいのか。その処方箋を、長年学校教育に携わり、後進の育成にも情熱を注ぐ野口芳宏氏と、心理学者・教育者として日本の教育現場の現状に警鐘を鳴らしてきた榎本博明氏のお二人に、縦横に語り合っていただいた。
やはり教育とは何か、何のためにこの教育をするのか、いま一度「根本回帰」「原点回帰」をしなければ、日本の教育の危機を救うことはできないと思います
野口芳宏
植草学園大学名誉教授
仏教では「身口意一致」が大事だと言っているんです。この言葉を初めて聞いた時、本当に感動しました。「言行一致」だけではなく、心遣いまで一致していなくてはいけない。心遣いが言葉を選び、行動を選ぶのですから。
いまの日本の教育は、口達者で体も小まめに動くけれども、根本である心遣いの教育、徳の教育がどうも貧しくなっているように思えてなりません。
その心遣いの教育の大切さを伝えていくべく、これからも力の限り塾を続け、若い人たちに向き合っていきたいですね。
内面を充実させ、知識と教養を深める。それが困難な時代を生き抜く力になります
榎本博明
MP人間科学研究所代表
私は学生に「社会に出て役立つ実用的なスキルばかり追い求めてはいけない。そんなものは時代や環境が変わればすぐ適用できなくなる」「むしろ、日頃から基本的な教科書や専門書、様々な本をじっくりと学び、自分の内面を充実させ、知識と教養を深めなさい。それが困難な時代を生き抜く、変化の時代に対応する一番の力になる」と伝えています。
そして、その自分の力を現実社会に生かしていくためには何が必要かといえば、それは先ほど述べた使命感です。
プロフィール
野口芳宏
のぐち・よしひろ―昭和11年千葉県生まれ。33年千葉大学教育学部を卒業後、国・公立小学校の教諭に。平成4年校長に就任。8年定年退職し、北海道教育大学教授に。13年退官。現在は植草学園大学名誉教授を務める傍ら「授業道場 野口塾」を主宰し、現役教師の指導に取り組む。著書に『教師の心に響く55の名言』(学陽書房)『授業づくりの教科書道徳授業の教科書』(さくら社)『名著復刻 授業で鍛える』(明治図書出版)など多数。
榎本博明
えのもと・ひろあき―昭和30年東京都生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在MP人間科学研究所代表。著書に『伸びる子どもは〇〇がすごい』(日経プレミアムシリーズ)『教育現場は困ってる―薄っぺらな大人をつくる実学志向』(平凡社新書)など多数。
編集後記
日本の教育は何が問題であり、どのような方向へ向かっていけばよいのか――野口芳宏さんと榎本博明さんが現場の実体験を交えて語り合う教育論は、現在の日本の教育が抱える問題の本質を鋭く突き、またこれからの日本が進むべき具体的な指針も明快に示してくれます。教育者のみならず、子供や若者に向き合う人すべてに読んでほしい対談です。
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