2 月号ピックアップ記事 /対談
古典の名著『大学』に学ぶ 修己治人の道——先哲の教えを現代に活かす 平川理恵(広島県教育委員会教育長) 田口佳史(東洋思想研究家)
古来、日本の先人たちが修養の糧として学んできた東洋古典『大学』。人間や社会の原理原則を説くその教えは、この混迷の時代に大きな指針となるものである。広島県教育委員会教育長の平川理恵氏は、東洋思想研究家・田口佳史氏のもとで長年、古典を学んできた塾生の一人。トップ営業社員、起業家、民間人校長などの経歴を経て、現在は広島県にて様々な教育改革の陣頭指揮を執っている。その実践は『大学』の教えそのものと話す田口氏と共に、『大学』の教えを現代にどう生かすかを語り合っていただいた。
湯﨑知事から「この教育改革を何年でやるの」と聞かれた時、「5年でやります。そのくらい強く思っていないと実現しませんから」と答えましたけれど、4年目に入ったいまその手応えは確実に感じますね
平川理恵
広島県教育委員会教育長
私が徹底して取り組んだのはやはり現場主義ですね。最初の9か月で県立学校百校を全部回り、それから23市町の小中学校も、全部とはいきませんが視察し、そこで先生方と膝をつき合わせて意見を聞いてきました。
それを通して広島の教育は必ず変わることを実感したのです。
『大学』には「物に本末有り、事に終始あり。先後する所を知れば、即ち道に近し」とあります。物事には根本と末、終わりと始めがある。何を先にし、何を後にすべきかを知って行動すれば道から外れることはないと教えているんです
田口佳史
東洋思想研究家
『大学』が説く平天下、つまり天下泰平の世はいきなりはできないんです。それには国が治まらなきゃいけないし、国が治まるには家が整わなくてはいけない。しかし、それも何のベースもなしにはできない。
最終的には一人ひとりの身が修まらない限り、いくら素晴らしい理念を掲げたとしても世の中の平和は実現できないことを『大学』は教えているんです。
プロフィール
平川理恵
ひらかわ・りえ―昭和43年京都府生まれ。平成3年同志社大学文学部卒業。リクルート入社。情報誌の営業を担当しトップセールスとなる。9年南カリフォルニア大学にMBA留学。11年退職。留学支援会社設立。21年会社を売却。22年横浜市の民間人校長公募により市立市ヶ尾中学校長などを歴任。30年広島県教育委員会教育長となり様々な教育改革を手掛けている。
田口佳史
たぐち・よしふみ―昭和17年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、日本映画社入社。47年イメージプランを創業。著書に『佐久間象山に学ぶ 大転換期の生き方』をはじめ『ビジネスリーダーのための老子「道徳経」講義』『人生に迷ったら「老子」』『横井小楠の人と思想』『東洋思想に学ぶ人生の要点』『「書経」講義録』など。最新刊に『「大学」に学ぶ人間学』(いずれも致知出版社)。
編集後記
2月号の表紙を飾っていただいた広島県教育委員会教育長の平川理恵さんは、リクルート情報誌のトップ営業社員、起業家、女性で民間人初の公立中学校校長などを経て、広島県の教育界のトップに立った異例の経歴の持ち主です。長年、東洋思想研究家・田口佳史さんの薫陶を受け、多くの東洋古典に親しんでこられました。『大学』の学びが教育改革での実践に繋がっていることが田口さんとの対談の中で明らかになっていきます。
特集
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