これからの時代に求められるのは人間教育——人づくりに徹する両校の実践録 田中良樹(箕面自由学園学園長兼中学校高等学校校長) 杉山元彦(聖徳学園理事長)

教員の就職率NO.1の岐阜聖徳学園大学。大阪府内で受験者数NO.1を誇る箕面自由学園高等学校。両校のトップを務めるのが杉山元彦理事長と田中良樹校長である。初対面ながらも、教育に懸けるひたむきな情熱、高い志に共感し合った本対談。それぞれの歩みを交えて、今日までの実践の日々を語り合っていただいた。

単なる知識の切り売りではなく、『生きる力』を与えるためにも、教師自身が自己を高め続けなければいけないと思います

田中良樹
箕面自由学園学園長兼中学校高等学校校長

 もう一つ私が危機感を抱いているのが、教育現場の質です。ご存じのように2022年度から高校の学習指導要領が大幅に変わりますが、その中で「探究」が新たなキーワードになっています。それまでの「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」になる他、「日本史・世界史探究」「理数探究」など、7つの科目が新設されます。
 生徒の思考力や判断力、表現力などをさらに育むことが目的ですが、これにとても大きな不安を抱いています。というのも、各教員の持つスキルによって授業の質が全く違ってしまうからです。文科省は簡単に「探究」と言いますが、現場に落とし込もうとしたら、授業で現代的な要求に応えるレベルを維持するのは非常に困難です。
 私も含めて学校の教員は異業種の経験を持たない人が多いので、この変化の激しい時代に「社会を見る目」をしっかり養う必要があります。教えるということは、教師側にどれだけのポテンシャルがあるかを試されるように思います。

子どもの無限の可能性をいかに引き出し伸ばしてあげられるか。教育というのは、一種の「宝探し」だと思っています

杉山元彦
聖徳学園理事長

 教育は「教え育てる」と書きますが、訓示や叱責をするだけでなく、また表面に現れた現象だけを見るのではなく、子ども一人ひとりの内面、心の奥に宿る「仏性」を認め導いてあげることが大事です。
 それには一人ひとりの長所を讃嘆し、「褒めて伸ばす」ことが大切です。すなわち、「叱る教育から褒める教育へ」「詰め込み教育から引き出す教育へ」「縛る教育から解き放つ教育へ」です。子どもは皆、本当に素晴らしい潜在能力を持っています。

プロフィール

田中良樹

たなか・よしき――昭和38年兵庫県生まれ。大学院を卒業後、通信教育で教員資格を取得し、27歳から教壇に立つ。大阪桐蔭高等学校に14年、近畿大学附属高等学校に11年務める。平成26年から箕面自由学園高等学校の副校長に着任し、翌年校長に。令和3年学園長を兼務。

杉山元彦

すぎやま・もとひこ――昭和34年岐阜県生まれ。57年愛知大学法経学部卒業後、父親が創業したパール化成品入社。63年、29歳の時に社長に就任。翌年聖徳学園評議員に。平成23年理事長就任。


編集後記

共に子どもたちの人間性を育む教育に力を入れている聖徳学園理事長の杉山元彦さんと箕面自由学園学園長の田中良樹さんに、これからの時代に求められる教育について語り合っていただきました。お二人のお話から、急速なデジタル化が進む現代においても教育の不変の真理があることを教えられます。

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