12 月号ピックアップ記事 /インタビュー
夢の新薬開発に挑む —— アルツハイマー型認知症の根本治療薬開発に懸ける人生 杉本八郎(同志社大学生命医科学部客員教授/グリーン・テック社長)
世界初のアルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」を開発し、人類社会に大きな功績を残した杉本八郎氏。その開発の裏には、寝ても覚めても研究に打ち込む弛まぬ精進があったという。一時は研究職から離れざるを得ない逆境に立たされながらも、杉本氏は認知症によって苦しむ人々を救いたいという一念を失わなかった。アリセプトは症状の進行を遅らせることは可能だが、根治はできない。今年喜寿を迎えるいまなお、根本治療薬の開発に邁進している杉本氏の挑戦の軌跡と研究開発に懸ける思い、そして物事を成し遂げる要諦――。
発明や発見の前にはある時期、夢中になって打ち込む期間が必要です。死に物狂いで努力する人のもとに天は味方してくれるのでしょう
杉本八郎
同志社大学生命医科学部客員教授/グリーン・テック社長
私は12年前から『致知』を愛読しているのですが、最近『致知』で学んだのは教育者・東井義雄先生の「本物は続く。続けるから本物になる」という言葉です。私は諦めずにコツコツやり続けたからよかったのでしょう。
あと坂村真民先生の「鈍刀を磨く」という詩も大切にしています。
「鈍刀をいくら磨いても/無駄なことだというが/何もそんなことばに/耳を借す必要はない/せっせと磨くのだ/刀は光らないかも知れないが/磨く本人が変わってくる/つまり刀がすまぬすまぬと言いながら/磨く本人を/光るものにしてくれるのだ/そこが甚深微妙の世界だ/だからせっせと磨くのだ」
これは、努力してもなかなか報われないと思っている人には最大の援助の言葉です。24時間寝ても覚めてもという姿勢で仕事に打ち込んでいると、人知を超えた大きな計らいが得られる。それが今年喜寿を迎える私の信念です。
プロフィール
杉本八郎
すぎもと・はちろう――昭和17年東京生まれ。36年東京都立化学工業高校卒業後、エーザイ入社。在職中の44年中央大学理工学部卒業。平成2年人事部採用プロジェクト担当課長、8年アリセプトが米国で承認され発売開始。9年筑波研究所副所長、12年創薬第一研究所所長。10年薬のノーベル賞といわれる英国ガリアン賞特別賞受賞。15年同社を定年退職し、京都大学大学院教授。23年同志社大学生命医科学部客員教授。26年グリーン・テック社長就任。薬学博士。
編集後記
表紙とトップインタビューを飾るのは、世界初の認知症治療薬「アリセプト」を開発した杉本八郎さん。「あんたさん、誰ですか?」、ある日突然、母親が認知症を患ったことを機に、日夜研究に没頭。幾多の苦難を乗り越え、15年掛かりで遂に新薬開発に成功します。母親への恩返し、それが杉本さんの精進の原点にありました。
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