なぜクマ被害が増えているのか ~人間とクマが共に生きていくために~ 山﨑晃司(茨城県自然博物館 館長)

年々深刻になっているクマによる被害。特に近年は、クマが市街地ににも堂々と出没するようになり、誰にとっても無関係な問題ではなくなりつつあります。なぜクマの大量出没がとまらないのか、どう対処すればよいのか――。クマ研究35年の山﨑晃司先生に政府、地方自治体、個人、それぞれの視点から語っていただきました。

クマとの歴史的、文化的な繋がりに思いを致せば、共存はできなくても、うまく住み分けをして共にこの日本列島で生きていく道を実現していけるはずです

山﨑晃司
茨城県自然博物館 館長

クマによる被害が連日のように報道されています。「自分もクマに遭遇したら……」と、不安に思っている方も多いことでしょう。

一方、クマの凶暴性を過度に強調する報道も多く、とにかくクマを捕獲(駆除)すればよいという風潮が広がっている現状には、専門家として危惧を覚えます。

私はもともとアフリカでライオンの研究に取り組んでいたのですが、1991年、当時の東京都高尾自然科学博物館の学芸員に就いたことをきっかけに、クマの研究に転じました。東京奥多摩をはじめとして日光、東北、韓国、ロシアなど、クマと向き合っていく中で、人間と同様クマにも一頭一頭個性があることが分かり、その魅力に引き込まれていったのです。

以来、麻酔で捕獲したクマから血液や遺伝子のサンプルを採取したり、GPSを装着して生態を調査したり、35年以上クマと共に歩んできました。近年の大量出没や人的被害についても、いまに始まったことではなく、2000年頃から問題になっていました。

その理由の一つは、特にツキノワグマの分布域が本州全域に広がり、個体数が増えていることが挙げられます(北海道に生息するヒグマの個体数も増えています)。

なぜツキノワグマの分布域が広がっているかというと、日本の人口が減少局面に入り、高齢化・過疎化が急激に進んだ結果、人間が山の裾野のからどんどん撤退し、田畑が荒れ果てて森林に戻り、クマの生息環境が広がっているからに他なりません。これはクマに限らず、サルなど森林性の野生動物にも共通して言えることです。

また、人間が山の裾野から撤退していくということは、それまでクマを生活資源として狩猟していた人たちもいなくなることを意味しますから、当然、クマの個体数は増えていくことになります。……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~
◇クマによる被害が増えている理由
◇科学的な根拠に基づいたクマの管理対策を
◇どこにでもクマはいるという意識で生活する
◇日本人は縄文の昔からクマと共に生きてきた

クマ研究の第一人者、山﨑さんが語るクマ対策の本質、私たちがクマと共いに生きていくために大事なこととは――。ぜひご覧ください。

プロフィール

山﨑晃司

やまざき・こうじ――昭和36年東京都生まれ。東京農工大学大学院連合農学研究科博士(農学)。茨城県自然博物館首席学芸員などを経て、東京農業大学地域環境科学部教授および茨城県自然博物館館長。クマを中心とした動物生態学、保全生態学の研究を専門としている。著書に『ツキノワグマ すぐそこにいる野生動物』(東京大学出版会)『ムーン・ベアも月を見ている』(フライの雑誌社)など。


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