かくして日本発の新薬は誕生した【アトピー性皮膚炎治療薬の研究開発に懸けた執念と創意】 椛島健治(京都大学大学院医学研究科皮膚科学教授)

日本発の2種類の画期的な新薬がアトピー性皮膚炎に苦しむ世界中の人々を救っている――。従来のステロイド性治療薬には副作用があり、数多くの研究者たちが創薬を試みるも、悉く失敗する冬の時代が長く続いたという。そんな困難な研究開発に並々ならぬ執念と創意を注いできたのが、京都大学大学院医学研究科皮膚科学教授・椛島健治氏、56歳。世界に先駆けて金字塔を打ち立てることができたのはなぜか。これまでの道のりを辿りつつ、その原点や転機、思考と行動の習慣、独創的なアイデアを生み出す秘訣、自身を突き動かす使命感に迫った。

与えられた環境の中で何を学び、どう次に繋げるか。環境に制約があっても、そこでしか学べないことを見出す。そうすると必ずチャンスが訪れるんです

椛島健治
京都大学大学院医学研究科皮膚科学教授

――椛島さんはアトピー性皮膚炎に関する画期的な治療薬を開発されたそうですね。

〈椛島〉 
アトピー性皮膚炎の患者さんは日本に数百万人、世界全体では2億3千万人以上いるとされ、それだけ数多くの方が苦しい生活を強いられています。その治療薬の開発は簡単な道のりではなく、長い間、創薬の試みが悉く失敗する冬の時代が続きました。そういう状況の中で、幸運にも2つの新薬の開発に携わることができたのは研究者冥利に尽きます。

2020年1月に、炎症を引き起こす物質の働きを直接ブロックし、痒みや赤みを改善する非ステロイド性の塗り薬「デルゴシチニブ(コレクチム軟膏)」を、2022年8月に、ステロイド外用薬や抗アレルギー薬など既存の薬では十分な効果が得られなかった重度の痒みを抑える注射薬「ネモリズマブ(ミチーガ)」を、それぞれ世に送り出すことができました。

もちろん、これらの薬剤は製薬企業の研究開発チームや多くの共同研究者、臨床試験にご協力いただいた先生方・患者さんのご尽力によって実用化に至ったもので、僕はその基礎研究や開発の一部に関わらせていただきました。

アレルギーに限らず皮膚の病は治らないものが結構多いんです。蕁麻疹やアトピーは薬である程度コントロールできますけど、薬をやめたら元に戻ってしまう。対症療法ではなく、薬をやめても痒みが出ない状態に保ち、QOL(生活の質)を向上させる根本的な治療をどうやって確立するか。いまはそこを目指し、……(続きは本誌をご覧ください)

本記事の内容 ~全7ページ(約10,000字)~
◇皮膚医学の謎をすべて解明したい一心で
◇臨床と研究の二刀流を可能にする時間管理術
◇医師を志した原点と両親から受けた影響
◇留学が転機となり米国の病院で腕を磨く
◇「働かなくてはならぬ」恩師・成宮先生の教え
◇1000回以上の失敗を経て辿り着いた日本発の新薬
◇教科書の常識を覆すことで画期的な発見に至った
◇置かれた場所で花を咲かせ どんな逆境も楽しむ
◇人生で一番大事なもの「運 鈍 根」の三条件

プロフィール

椛島健治

かばしま・けんじ――昭和45年岐阜県生まれ、北九州育ち。平成8年京都大学医学部卒業。医学博士。横須賀米海軍病院、京都大学、ワシントン大学、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、産業医科大学などでの勤務を経て、27年京都大学大学院医学研究科皮膚科学教授。シンガポールA*Starシニア主任研究員(兼任)。日本皮膚科学会賞、免疫学会賞、日本学術振興会賞、文部科学大臣表彰などを受賞。近著に『人体最強の臓器 皮膚のふしぎ』(講談社)。


編集後記

アトピー性皮膚炎に関する2種類の画期的な新薬の誕生に携わった椛島健治さん。ランニングが趣味で、朝6時には走って京大に出勤するといいます。臨床と研究の二足の草鞋を履くご多用な日々にも拘らず、『致知』を愛読されていた縁もあり、喜んで取材を引き受けてくださいました。研究開発に懸ける歩み、その執念と創意はもとより、椛島流の時間管理術も示唆に富んでいます。

バックナンバーについて

致知バックナンバー

バックナンバーは、定期購読をご契約の方のみ
1冊からお求めいただけます

過去の「致知」の記事をお求めの方は、定期購読のお申込みをお願いいたします。1年間の定期購読をお申込みの後、バックナンバーのお申込み方法をご案内させていただきます。なおバックナンバーは在庫分のみの販売となります。

定期購読のお申込み

『致知』は書店ではお求めになれません。

電話でのお申込み

03-3796-2111 (代表)

受付時間 : 9:00~17:30(平日)

お支払い方法 : 振込用紙・クレジットカード

FAXでのお申込み

03-3796-2108

お支払い方法 : 振込用紙払い

閉じる