『名将言行録』 戦国三英傑に学ぶ、勝機を掴む将の条件 川﨑 享(エム・アイ・ピー社長)

この本がなければ、あの歴史小説、大河ドラマも生まれなかった? 幕末の館林藩士・岡谷繁実が、1,200を超える日記や戦記、古文書を渉猟して編んだ『名将言行録』。戦国武将から江戸期の大名まで、名将192人の言行と英知が克明に記された大著である。勝機を掴む俊傑の条件とは何か。小学生にして同書に魅せられ、経営の傍ら探究を続けてきた川﨑 享氏が語る、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の遺訓に学ぶ。

いまでも私たち日本人の中には名将たちのDNAが眠っています。それは彼らの特権ではなく、苦境を乗り越える中で、誰もが開花させ得るものなのです

川﨑 享
エム・アイ・ピー社長

もしもこの本がなければ、大河ドラマのあの名作も、生まれなかったかもしれません。

江戸末期から明治初頭、館林藩(現在の群馬県)藩士・岡谷繁実(おかのやしげざね/1835~1919)が16年の歳月をかけて編纂した『名将言行録』。膨大な日記や戦記、系図などを渉猟し、戦国武将や江戸期の大名のべ192名の言行、逸話を網羅した大著です。明治以降の歴史小説や戦国ドラマの多くが、本書に基づいているのです。

私の手元に明治初版の原書がありますが、初めに1,200もの引用書目が記されています。電話もない時代によくここまで集めたものだと、その執念に感嘆します。

中には伝承も含まれるため、虚実混交として学術的には重視されてきませんでした。ただ、価値がないと断じるのは早計です。どの言葉も岡谷の丹念な調べから「この人物はこう言ったに違いない」と思わせる迫真性があり、学べることは大いにあるからです。

私と本書の出逢いは、小学4年生の時でした。『まんが 日本の歴史』で歴史の面白さに目覚め、次いで新書版の『名将言行録』を買ってもらい、すっかりはまってしまったのです。

思えば、私が社会に出た1990年代の製造業界は、本書同様、個性の強い経営者の宝庫でした。電機メーカーに勤務していた頃、トヨタ生産方式(TPS)をものづくりに広く応用する異業種勉強会「NPS研究会」と出合い、元トヨタ副社長の大野耐一さんの右腕・鈴村喜久男さん(当会実践委員長)の鞄持ちを2年務め、錚々たる経営者とお会いしました。その度に「ああ、この方はまるで武田信玄だ」などと『名将言行録』を通じて人物を観ていたものです。

日本は人材の枯渇が叫ばれていますが、いまでも私たち日本人の中には名将たちのDNAが眠っています。それは彼らの特権ではなく、苦境を乗り越える中で、誰もが開花させ得るものなのです。……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~(全4ページ)
◇『名将言行録』に日本人の底力を見る
◇心がけは素質に勝る――信長
◇小事を怠らず努める――秀吉
◇長となるほど慎みを持て――家康
◇常在戦場、決して油断しない

プロフィール

川﨑 享

かわさき・あつし――昭和40年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、ミシガン州立大学大学院史学修士課程修了。電機メーカーおよびコンサルティング会社役員を経て、トヨタ生産方式(TPS)の異業種への応用を図る「NPS研究会」の運営会社エム・アイ・ピーに入社。同社専務取締役NPS推進室長などを経て、平成25年より代表取締役社長。著書は『「名将言行録」に学ぶリーダー哲学』三部作(東洋経済新報社)ほか共・編著多数。リンガーハット社外取締役、クリナップ社外取締役。


編集後記

192名もの卓越した武将・大名の言行が凝縮された『名将言行録』。小学4年生で同書に出逢い、会社経営の傍ら学び続けてきた川﨑 享さんに、時代を変えた戦国三英傑を範として、俊傑の条件を繙いていただきました。仕事も人生も「常在戦場」の覚悟で勝機を掴みたいものです。

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