南鳥島沖に眠るレアアース泥が日本の未来を拓く 加藤泰浩(東京大学大学院工学系研究科 教授)

スマートフォンや電気自動車、LEDを筆頭に、ハイテク産業には欠かせないレアアース(希土類)。その巨大鉱床が南鳥島周辺の海域に眠っていることを世界で初めて突き止めたのが、地質学者の加藤泰浩氏である。現在は国産レアアース資源開発の実現に向け、様々な取り組みを進めている。レアアース研究の第一人者である氏の研究人生を交え、レアアースを取り巻く現状と課題、そして日本再生の道筋を語っていただいた。

研究は世のため、人のためにある——
自分の名誉や利益のためではなく、人のためにと思えば力が湧いてきますし、四方八方から圧力を掛けられようとも一切挫けない

加藤泰浩
東京大学大学院工学系研究科 教授

――今年2月、南鳥島沖の深海5600メートルでレアアース(希土類)を含む泥の採取に内閣府のチームが世界で初めて成功し、話題を集めました。

〈加藤〉 
レアアース泥が脚光を浴びていることは、日本の未来にとって明るい兆しだと思います。特に今回の採取成功は、研究開発の面で大きな意義がありました。

ただ、私たち東京大学チームが最も重視するのは迅速な産業化です。なぜなら、レアアースほどサプライチェーンで付加価値のつく資源は他にありませんから。

現在日本はレアアース原料を中国から年間860億円で輸入し、製品市場は年8.5兆円、レアアース製品を用いたハイテク産業は年34.5兆円に上ります。400倍の経済市場に直結するので、この資源確保は絶対に必要なんです。

ところが、現在はその大半を中国に握られているせいで、様々な混乱が起こっています。また、中国は南鳥島のEEZ(排他的経済水域)に隣接する公海上の調査を活発化させており、虎視眈々と公海上の資源開発を狙っています。ここで後れを取るわけにはいかない。一刻も早く産業化を実現しなければならないと、危機感を募らせています。

――事態は一刻を争うと。そもそも、レアアースとはどのような資源なのですか。

〈加藤〉 
レアアースは、スカンジウムやイットリウム、ランタノイド15元素の全17元素の総称を指します。詳細は省きますが、特殊な電子配置を持ち、その特殊性ゆえにスマホをはじめとした様々なハイテク製品に使われています。

例えば、……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~(全4ページ)
◇レアアース泥は日本の生命線
◇夢の泥の発見は偶然の産物
◇レアアース・ショックで定まった覚悟
◇転機となった石原慎太郎都知事との邂逅
◇研究は世のため人のためにある

プロフィール

加藤泰浩

かとう・やすひろ――昭和36年埼玉県生まれ。60年東京大学理学部地学科卒業。平成2年同大学大学院理学系研究科地質学専攻博士課程修了、理学博士。山口大学理学部助手、東京大学大学院工学系研究科准教授などを経て、平成24年より現職。令和5年4月から3年間、東京大学大学院工学系研究科長・工学部長を務めた。千葉工業大学 次世代海洋資源研究センター所長も兼務。著書に『太平洋のレアアース泥が日本を救う』(PHP新書)がある。


編集後記

今年2月、都心から約1900キロ離れた南鳥島沖の深海でレアアースを含む泥の採取に内閣府のチームが世界で初めて成功し、今後の動向に注目が集まっています。
東京大学大学院教授の加藤泰浩さんは、「この深海に眠る資源を一刻も早く産業化しなければならない」と警鐘を鳴らします。「研究は世のため、人のためにある」「私は『もし自分が倒れたら、日本は潰れる』という覚悟で研究に没頭してきました」との言葉の数々から、加藤さんの研究に対峙する姿勢、並々ならぬ覚悟が垣間見えました。

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