恵まれない幸せ 恵まれる不幸せ 矢野博丈(大創産業創業者)

100円ショップの先駆けとして知られ、現在国内外に約5200店舗、売上高は5800億円を超える業界最大手「ダイソー」。29歳の時に広島県の雑貨移動販売からスタートし、今日の繁栄の礎を築いたのが矢野博丈氏である。人生の辛酸を嘗め尽くしたという氏の二十代の歩みを辿ることで、運命を拓く要諦を探る。
【1972年、矢野商店創業期の矢野さん(前列左端)と従業員たち(写真提供:大創産業)】

幾多の苦労に見舞われるということは、もっと徳を積み、幸せになりなさいという神様からのエールです。

困難に揉まれ、人間が鍛えられた先に、回り回って徳や運が味方につき、自ずと運命は拓けていくのです

矢野博丈
大創産業創業者

2022年、100円ショップ「ダイソー」を手掛ける大創産業は創業50周年を迎えました。行き当たりばったりの歩みを振り返り、よく潰れずにここまで来たなと感慨深いものが込み上げてきます。

創業当初は銀行や経営コンサルタントから「100円ショップでは儲からん。やっていけるはずがない」と散々言われたものです。実際、倒産の二文字が頭から離れたことはなく、入社式では「いずれこの会社は潰れる」と伝えていました。

ただ、常に不安に駆られていたからこそ、決して安住することなく、「潰したくない」とその瞬間、瞬間を一所懸命生き抜いた。この積み重ねが、今日のダイソーを築いたのだと自負しています。

私は八人きょうだいの末っ子として、広島県で生まれ育ちました。開業医だった親父は、貧しい患者からは一切治療代を取らないことで知られ、たとえ夜中の12時であろうとお構いなしに、馬に乗って隣の村まで往診していました。

そのため地元のバスに乗車した際、「お宅のお父さんは命の恩人です」と感謝された経験は一度や二度に留まりません。

親父は貧しい家庭を多く診ていたこともあり、自分の子供には同じ苦労をさせたくなかったのでしょう。私の顔を見るたびに、……

▼「夜逃げ、9回の転職の末に」「100円ショップは偶然の産物」「経営とは『経験の科学』」等、数多の艱難辛苦を乗り越え、独自のビジネスモデルを生み出した矢野さんの足跡には、道なき道を切り拓く要諦が詰まっています。全文は本誌をご覧ください!

プロフィール

矢野博丈

やの・ひろたけ―—昭和18年広島県生まれ。41年中央大学理工学部卒業。学生結婚した妻の家業を継いだものの26歳で夜逃げ、9回の転職を重ね、47年雑貨の移動販売を行う矢野商店を夫婦で創業。52年大創産業設立。62年「100円SHOPダイソー」1号店が誕生。平成22年売上高3000億円を突破。30年会長就任。31年会長退任。現在、中央大学特別招聘教授を含め、3つの大学で教授を務めている。


編集後記

「困難を乗り越える秘訣なんてない。一日一日を積み重ねる他に道はないけえ」。そう頻りに口にする矢野さんの姿が頭から離れません。夜逃げ1回・転職9回・火事1回という想像を絶するどん底から這い上がってきた矢野さんだからこそ、その一言一句が重く伸し掛かり、心を揺さぶられました。

2023年12月1日 発行/ 1 月号

特集 人生の大事

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