1 月号ピックアップ記事 /生涯現役
見返りを求めない徳積みは生きて返ってくる 大場八朗(ねぎし丸昇店主)
煮干しと昆布で出汁をとった〝江戸うすくち〟のおでんと8時間煮詰めた蜜を絡めた大学芋で多くの人々の心を掴み、著名人の常連も多い「ねぎし丸昇」(東京・日暮里)。90歳のいまなお現役で同店を切り盛りする店主の大場八朗さんに、大事にしてきた両親の教えや仕事の中で掴んだよりよい人生を送る秘訣を伺った。
これまで90年生きてきて思うのは、一つひとつの商品、一人ひとりのお客さんに祈るような気持ちで、見返りを求めず真心込めて向き合っていく。それが仕事も人生もよいものにしていくということですね
大場八朗
ねぎし丸昇店主
――肌は艶々で若々しく、足取りもしっかりされていて、大場さんはとても御年90には見えませんね。若さを保つ健康法などを何か実践されているのでしょうか。
〈大場〉
それはやっぱり働くことですね。商売ってのは、やっていると夢中になるようなところがあるでしょう? 特に私のやっているのは自分で料理をつくって自分で売る商売だから、より好奇心が出てくるし、夢中になれる。それが積み重なって気づいたら90になっていた、という気がするね。
自分では年齢のことは全然気にしてなくて、10年くらい前だったか、役所の人に「あら、おじいさん、元気だね。80過ぎて仕事やってる人は少ないよ」と言われた時に「へえ」と思ったくらい。
――仕事に夢中になることが健康長寿の秘訣であると。いまもお店の切り盛りはすべてご自身で?
大場 そうそう。42歳で商売を始めましたから、それから48年間ずっと現場に立ってきました。もちろん、かみさんや従業員にも手伝ってもらいながらね。
――これまでに大きなご病気などは経験されなかったのですか。
大場 病気は1回だけ。70歳くらいの時、……(続きは本誌をご覧ください)
プロフィール
大場八朗
おおば・はちろう――昭和8年山形県生まれ。上京して築地の文房具店で働いた後、湯葉と生麩の店に入って料理を学ぶ。10年勤めたのち独立。50年42歳の時に、日暮里でおでんと大学芋の店「ねぎし丸昇」を開く。
編集後記
90を超えてもなお現場に立ち続けるねぎし丸昇店主の大場八郎さん。取材に訪れると、二人三脚でお店を切り盛りしてきた奥様と共に、満面の笑みで迎えてくださいました。取材中も自慢のおでんと大学芋を振舞ってくださるなど、まさに「見返りを求めない徳積み」の実践を体験させていただきました。
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