2 月号ピックアップ記事 /二十代をどう生きるか
「運」と「勘」と「度胸」を磨け 鈴木 喬(エステー会長)
業績不振に陥っていたエステーを立て直し、今日の発展を築いた鈴木喬氏。「消臭力」「脱臭炭」「米唐番」といったヒット商品を連発し、創業以来最高益を達成するなど経営改革を断行してきた。その豪胆無比、勇猛果敢な人格はいかにして培われたのか。これまでの足跡と共に、若い人たちへの率直なエールを伺った。
いまの若い人に必要なのは、根拠がなくてもいいから自信を持つこと。失敗してもまた立ち上がる。その繰り返しで度胸も自信もつくものだ
鈴木 喬
エステー会長
100年に一度と言われたリーマン・ショック、1,000年に一度と言われた東日本大震災。時代を遡っても、戦争や疫病など人類の歴史はいつだって危機の連続だった。しかしその度に、人類は困難を成長の糧とし、躍進してきた。
こんなことは不謹慎だが、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスも、見方を変えれば大きな変革のチャンス。日用品を扱うエステーは巣ごもり消費が急増したコロナ禍で、もっとお客様のお役に立てるはず。そう確信して、86歳のいまでも現場社員に日々檄を飛ばしている。
というのも、現在の日本は非常に恵まれた環境だと思うからだ。第一、餓死する人がいないし、失敗しても命までは取られない。僕ら昭和初期に生まれた世代は幼少期から常にお腹を空かせており、ドンパチドンパチ戦争が起こっていた。戦後は傷痍軍人や戦災孤児があちこちにいて、皆が生きるか死ぬかの日々を必死に生き抜いてきた。
よく「昭和の時代はよかった」というが、僕は「嘘をつけ」と思う。昭和以前を知らないから比べようがないけれど、それでも現代ほど素晴らしい時代はないだろう。
僕が20代を過ごした昭和30年代は現代と環境があまりに違う上に、僕が人に頭を下げず、常識も通用しないとんでもない野郎だったから人に語れることは多くない。だが、少しでもお役に立てればとの思いで振り返ってみたい。
プロフィール
鈴木喬
すずき・たかし――昭和10年東京生まれ。34年一橋大学商学部卒業後、日本生命保険相互会社入社。60年3月エステー化学(現・エステー)入社、平成10年社長就任後は、商品の品種を3分の1に絞り、新商品を年間1品に集中して売り出すなど大胆な経営改革により、高収益体質に変革させた。19年に社長を退くも、リーマン・ショックを機に21年会長兼社長に就任。24年より現職。著書に『社長は少しバカがいい。』(WAVE出版)。
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