7 月号ピックアップ記事 /対談
紛れもない私を生き切れ——師と弟子が語り合う「日本人にいま伝えたい魂のメッセージ」 行徳哲男(日本BE研究所所長) 松岡修造(スポーツキャスター)
感性の哲人・行徳哲男氏、92歳。米国の行動科学と感受性訓練を東洋の禅と融合し、「感性=紛れもない私」を取り戻す研修を創始した人物である。50年以上にわたって哲学実践の一道を歩み続け、政財界やスポーツ界など受講者数は3万人以上に及ぶ。スポーツキャスターの松岡修造氏もその一人だ。衝撃的な出逢いから約30年の時を経て、師と弟子が今回初めて本気で語り合う「日本人にいま伝えたい魂のメッセージ」。
とにかく現代は虚構、見せかけが多すぎる。決定的に大事なのは存在だよ。やっぱり独立した自分を生き切らなきゃ
行徳哲男
日本BE研究所所長
〈松岡〉
行徳先生、きょうはよろしくお願いします。
〈行徳〉
やぁ修造君、元気そうで。
〈松岡〉
先生は僕のこの声の大きさで聞こえますか?
〈行徳〉
ああ、聞こえる。耳はちょっと難聴かも分からんけど、一番問題は目。黄斑変性症でいま視力は0.05に下がってしまった。
ただね、目が見えなくなってから見えてくるものがいっぱいある。最初はなんで俺はこんな病気に罹るんだろうと思い煩ってたけど、いまは目が不自由になったおかげで、却っていろんなものが見えてきた。特に感覚的な鋭さがね。
〈松岡〉
心眼が研ぎ澄まされている。
〈行徳〉
とにかく現代は虚構、見せかけが多すぎる。お世辞とかおべっかとか美辞麗句が並びすぎる。もう見事に飾り立てとるよ。
やっぱりこれからは感性、実感の時代。だから、本気とか本音というものに対して妥協しないほうがいい。
いまの日本人に何を一番伝えたいか、どう感じているか、先生の心の声を聴いていきたいです
松岡修造
スポーツキャスター
〈松岡〉
先生にまずお伝えしなきゃいけないのは、きょうは対談じゃないと捉えています。僕はラッキーなことにこれまで二十数年間、日本や世界のトップアスリートを多くインタビューしてきました。
そして、90歳を超えられた先生をいまこそ『致知』でインタビューしたいと思ったんです。
いつもは先生から師事を仰ぐというか教えを受ける立場ですけど、きょうは全く逆の形で勝負したい。ですから、ずっとジタバタしていました(笑)。
なぜこれをしたかったかというと、相当失礼なことを言いますよ。僕はこれが先生との最初で最後の本気のインタビューだと思っているからです。もちろん今後もお会いします。でもそれはインタビューじゃない。
僕は先生の心を知りたいんです。今回、先生の本や『致知』のバックナンバー記事をいろいろ読み返しました。先生が譬え話で取り上げられる歴史的人物の言葉や逸話にはすごく感極まるんですけど、きょうはそこがメインじゃなくて、いまの日本人に何を一番伝えたいか、どう感じているか、先生の心の声を聴いていきたいです。
〈行徳〉
ああ、いいね。それはぜひやってもらいたいテーマだ。ただ、ちょっと一つだけ。……(続きは本誌をご覧ください)
~本記事の内容~
◇行徳先生の心の声を聴いていきたい
◇最大の危機はアイデンティティクライシス
◇「いまどんな気持ちですか」その問いを発する意味
◇弱さを知ることが本当の強さ
◇両親の不仲が「憤の一字」となった
◇煩悩を捨てるのではなく煩悩を食べる
◇ウィンブルドンベスト8に導いた行徳先生の一喝
◇真剣と深刻は違う 徳とは無類の明るさ
◇時代を動かすのは若者たち
◇生の躍動と充実 その極致が死である
◇知識や理性に偏らず行動あるのみ
◇迷いだらけの身だと思うことが本当の悟り
◇二人がそれぞれ師匠に学んだ生きざま
本記事では全10ページ(約14,000字)にわたって、行徳哲男さんと松岡修造さんの対談を掲載しています。
師と弟子が今回初めて本気で語り合う「日本人にいま伝えたい魂のメッセージ」とは何か。
そこには、どんなに時代や環境が変化しようとも振り回されず、「紛れもない私」を生き切るヒントが満載です。
プロフィール
行徳哲男
ぎょうとく・てつお――昭和8年福岡県生まれ。35年成蹊大学卒業後、大手財閥系企業に入社。労働運動の激しき時代に衝撃的な労使紛争を体験し、「人間とは何か」の求道に開眼。44年渡米、米国流の行動科学・感受性訓練と日本の禅や哲学を融合させ、「BE研修(Basic Encounter Training)」を開発。46年日本BE研究所を設立し、人間開発・感性のダイナミズムを取り戻す4泊5日の山中研修を完成。平成11年12月に終了するまで550回、政財界・スポーツ界・芸能界など各界のリーダー及びその子弟ら約3万名が参加。現在はそのエッセンスを凝縮した研修を続けている。著書に『感奮語録』(致知出版社)など。
松岡修造
まつおか・しゅうぞう――昭和42年東京都生まれ。10歳から本格的にテニスを始め、慶應義塾高等学校2年生の時にテニスの名門校である福岡県の柳川高等学校に編入。その後、単身アメリカへ渡り、61年プロに転向。怪我に苦しみながらも、平成4年6月にはシングルス世界ランキング46位(自己最高)に。7年にはウィンブルドンで日本人男子として62年ぶりとなるベスト8に進出。10年現役を卒業。現在はジュニアの育成とテニス界の発展のために力を尽くす一方、スポーツキャスターなど、メディアでも幅広く活躍している。著書に、修造日めくりカレンダー『まいにち、修造!』(PHP研究所)など多数。
編集後記
長年の『致知』愛読者でもある松岡修造さんが「いまこそ『致知』でインタビューしたい」と指名されたのが、心の師・行徳哲男さん。4月上旬、致知出版社で本対談は行われました。取材前の和気藹々とした雰囲気から一転、いざ始まると、張り詰めた中で真剣勝負の問答が繰り広げられ、最後は再び笑顔で終了。2時間半に及ぶ白熱の師弟対談に興味は尽きません。
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