8 月号ピックアップ記事 /対談
偉大な父の志を継いで 髙江智和理(北海道光生舎理事長) 森田隼人(シャボン玉石けん社長)
事故で両腕を失った創業者によって立ち上げられ、北海道有数の企業グループへと成長した北海道光生舎と、17年続く赤字を乗り越え、健康と環境に安心な無添加石けんへの初志を貫いたシャボン玉石けん。髙江智和理氏(写真右)と森田隼人氏(写真左)は、それぞれに父親の志を継いで両社の経営に邁進している。人生の悲愁を味わい尽くした先代の破格の生き方から、お二人は何を学んだのか。そしていかにして事業の継承を成し遂げたのかーー。
とにかく父には怒られました。しかしその一つひとつが、全部身になっています
髙江智和理
北海道光生舎理事長
〈髙江〉
以前、森田社長のご講演を拝聴したことがありますけれども、御社が手掛けてこられた無添加石けんのお話にとても感銘を受けました。その時に見せていただいた映像で、合成洗剤の入った水槽では魚が死んでしまうのに、石けんを水槽に入れると、魚が平気で餌にして食べてしまったのが印象に残っています。
〈森田〉
ありがとうございます。髙江理事長にご参加いただいたのはもう10年以上前だったと思いますが、その時の話を覚えてくださっていてとても嬉しく思います。
「健康な体ときれいな水を守る。」というのが当社の企業理念で、体や環境に安心な天然素材だけで製造した無添加石けんを、いまも一貫して提供し続けています。
おかげさまでこのコロナ禍では、ハンドソープの需要が急増しました。さらに健康や環境への意識の高まりも追い風となり、シャンプー、歯磨き、洗濯、食器洗いといった、コロナと関係ない商品も軒並み伸びて、年商は94億円に達しています。
〈髙江〉
それは素晴らしいですね。あいにく私どものクリーニング業界はコロナ禍で大きな打撃を受けました。
父の言葉で大きな影響を受けたのが、父の信条である『好信楽』です
森田隼人
シャボン玉石けん社長
〈高江〉
当社の売り上げは、一般家庭やホテル、レストランなどを対象とするクリーニング事業と、障がい者向けの就労支援事業として運営するクリーニング工場の収益で成り立っています。ところがこのコロナ禍でクリーニングの需要が激減しましてね。特にホテル関係は一時期1割くらいまで落ち込みましたが、ここへ来てようやく8、9割まで回復してきたところです。しかし一般家庭のクリーニングは、リモート勤務の浸透で背広を着る機会が減ったことなどから、日本全体で需要が2割消えてしまいました。これはコロナが収束しても戻らないと考えています。
〈森田〉
私は無添加石けんを始めた父・森田光德の後を継いで経営をしていますが、理事長もお父様が立ち上げられた事業を引き継いで経営をなさっているそうですね。
〈髙江〉
ええ。当社は障がい者の方々の雇用を支援するために、父・髙江常男が1956年に地元北海道の赤平市で立ち上げた社会福祉法人を母体とする会社です。十数名の障がい者の方々と共に始めた事業を、父は自身も障がい者でありながら一代で100億円企業に育て上げました。
〈森田〉
事業を成功させるだけでも大変な中で、ご自身が障がい者でありながら、しかも他の障がい者の方々の雇用を守りつつ会社を成長させてこられたのは並大抵のことではありませんね。
プロフィール
髙江智和理
たかえ・ちおり―昭和35年北海道生まれ。58年法政大学経済学部卒業、北海道光生舎入社。常務理事を経て、平成13年理事長に就任。
森田隼人
もりた・はやと―昭和51年福岡県生まれ。平成12年専修大学経営学部卒業、シャボン玉石けん入社。取締役、副社長を経て、19年社長に就任。
編集後記
北海道光生舎理事長の髙江智和理さんとシャボン玉石けん社長の森田隼人さん。何より印象的だったのがお二人のお父様の在り方でした。事故で両腕を失いつつも障がい者のために事業を興した人物と、17年赤字が続く中で初志を貫いた人物。各々の鮮烈な人生に圧倒される思いです。
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