悲愁を越えて歩み来た百年 吉村光子(100歳)

先日、『致知』の愛読者から弊社のお客様係に一通の手紙が届いた。差出人は長崎県在住の吉村光子さん、御年100歳。便箋5枚、直筆で力強くびっしりと綴られた文章はまるで長編の詩のようだった。その一部を6月号の特集総リードで紹介したところ、大変な反響をいただいた。22歳の時に被爆し、九死に一生を得た吉村さんの人生は、まさに悲愁を越えて歩み来た100年である。長崎のご自宅を訪ね、健康長寿の秘訣、人格形成の原点、幾多の試練に直面する中で支えになった信条、よりよい人生を送る心得に迫った。

どんな艱難辛苦に遭っても悲観せず、上を向いて歩く。これを自分の人生の誓いとして心懸け、実践してきました

私は16、17歳の時に両親と死別し、7人きょうだいの長女ですが、4人の兄も2人の妹もみんな病気や戦争で早世しています。

2回の流産と1回の死産で子供にも恵まれず、天涯孤独で不幸だなと思った時期もありました。

でも、そういう悲愁をたくさん経験してきた分、人に優しくすること、「ありがとう」という感謝の気持ちを忘れないこと、困っている人がいたら率先して助けること、かといって出しゃばらず謙虚素直な心でいること、どんな艱難辛苦に遭っても悲観せず、上を向いて歩くこと。

この5つを自分の人生の誓いとして心懸け、実践してきたつもりです。

人は落ち込んだら底なし沼のようにどこまでも沈んでいってしまいますからね。

毎号の『致知』には学識豊かな方々が登場されていて、本当に人生の道標だと感じています

本は人生の鑑になりますね。特に『致知』は絶対に手放せませんよ。

『致知』はいまから5年前、新聞の広告を見て、「あら」と思ってね。それまで手当たり次第に本を読んできましたけど、これこそ私の一番の心の師と仰ぐ本だと確信して申し込んだんです。

うわぁこんな素晴らしい本が日本にもあったのかしらって。逆になぜもっと早く知らなかったのか、残念でなりませんでした。

『致知』を読み始めてからは他の雑誌は読めないですね、本当に。

毎号の『致知』には学識豊かな方々が登場されていて、本当に人生の道標だと感じています。

この本を若い人から大人まで年齢を問わず、日本中の人たち皆に読んでもらいたいと心から思いますね。そうすれば目の前が開け、幸福な人生を歩めると信じています。

プロフィール

吉村光子

よしむら・みつこ――大正12年東京生まれ。生後間もなく関東大震災で被災。女学校を卒業後、父親の転勤により上海へ移住するも、16歳で父親と、17歳で母親と死別する。その後、長崎の叔母の家に預けられる。昭和20年8月9日、三菱兵器製作所に勤務中に被爆し、九死に一生を得る。22年に見合い結婚、仕事をしながら家計を支える。2回の流産と1回の死産を経験。平成19年には60年連れ添った夫が病死。以後、現在まで1人暮らしの生活を続けている。


編集後記

トップインタビューの吉村光子さんは、若くして両親やきょうだいと死別し、22歳で被爆。奇跡的に生き延びるも、過酷な労働も相俟って3回の流産・死産、60年連れ添ったご主人の看取り……と人生の辛酸を嘗め尽くしてきました。今年百寿を迎えますが、老眼鏡なしで読書をし、補聴器なしで会話をし、矍鑠たる姿はまさに驚異的です。心身共に健康な吉村さんの活力の源泉に興味は尽きません。

2023年7月1日 発行/ 8 月号

特集 悲愁を越えて

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