人生の老病死を受け止めて生きる智慧 田畑正久(佐藤第二病院院長)

大分県宇佐市の佐藤第二病院院長・田畑正久氏は、死と向き合う長期療養患者の診療に当たる一方、仏教伝道者としての顔を持つ。長年、医療と仏教との接点を模索し、縁ある人たちに老病死を乗り越える力を与えてきた田畑氏の話は、そのまま人生の悲愁を越える智慧でもある。

私たちが病や死に直面した時、それに怯えたり目を背けようとするのではなく、そこに積極的な意味を仏の智慧(仏智)で気づくように努めていくことが老病死の苦悩を超える方向性なのです

田畑正久
佐藤第二病院院長

〈田畑〉
私が院長を務める佐藤第二病院(大分県宇佐市)は小児科、内科、心療内科があり、他にも病弱なお年寄りなど長期療養の患者さんを50人ほどお世話をしています。その患者さんの主治医として仕事をしています。

医療の療養型は急性期病院と違って、患者さんにいかに自然に最期を迎えていただくかに治療の重点を置いていますから、老病死との向き合い方は私自身の大きなテーマでもあるわけです。

「歎異抄に聞く会」については、もともとは35年前に伯父の家で始めたもので、現在は私が属するお寺で月に1回開いています。地元の浄土真宗の信徒さんを中心に毎回20~30人が参加してくださいますが、考えたらもう400回以上、浄土真宗の御教えを伝えてきたことになりますね。

――医師が聞法会を主宰するというのは、とても珍しいのではありませんか。

〈田畑〉 
そうかもしれません。しかし、人間の生老病死の四苦に関わるという意味では医療も仏教も同じ四苦を課題としています。仏教は決してお坊さんの専有物ではありません。

プロフィール

田畑正久

たばた・まさひさ――昭和24年大分県生まれ。九州大学卒業後、九州大学医学部附属病院、国立中津病院、東国東地域広域国保総合病院(現・国東市民病院)を経て、現在佐藤第二病院(大分県宇佐市)院長。龍谷大学大学院実践真宗学研究科教授なども歴任。日本外科学会専門医、指導医を歴任。三十年ほど前から大分県内を中心に「歎異抄に聞く会」を開催。著書に『医者が仏教に出遇ったら』『医療文化と仏教文化』(共に本願寺出版社)など。


2023年7月1日 発行/ 8 月号

特集 悲愁を越えて

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