7 月号ピックアップ記事 /インタビュー
明日の成長に祈りを込めて 甲斐拓也(福岡ソフトバンクホークス選手)
第5回WBCで3大会ぶり3度目の世界一を掴んだ侍ジャパン。同チームの扇の要としての活躍が記憶に新しい甲斐拓也捕手は、育成選手からプロ入りし、苦節を経て史上初の記録を打ち立ててきた人物だ。幾多の恩師と書物を通じて交わり、自己鍛錬してきた軌跡を追う。
「目標がなければ、忍耐がない。目標がないと何事も成し得ない。目標のないものは、病気をもなおせぬ。苦労しても目標をもっている間は、人間が光っている」
――『生きよう今日も喜んで』(平澤興・著)
どんなに敗北が続いても、こういう言葉を読み返して、明日には少しでも成長できるよう、祈りを込めて野球に打ち込んでいきます
甲斐拓也
福岡ソフトバンクホークス選手
――読書を通して内省する習慣はもともとあったのですか?
〈甲斐〉
本の力を感じ始めたのは地元の大分で高校に通っていた頃です。当時の宮地弘明監督から1年生でキャッチャーに抜擢していただき、自ずと名キャッチャーだった野村克也さんの著書を教科書代わりに読むようになったんです。
キャッチャーを任されて初めて、「扇の要」と呼ばれるこのポジションの奥深さが分かり、野村さんの本には野球以外の大事なことも多く書かれていて、高校生ながら勉強になりました。ご著書はひと通り読みましたね。
――野球技術に限らず、人としてのあり方を学ばれたのですね。
〈甲斐〉
ただ、そこから2年の夏は大分県大会の準々決勝で完封負け、3年の夏は初戦敗退。ドラフトの候補にすらなれないまま引退したんです。プロに進む選択肢は自分の中にありませんでした。
そんな中で宮地監督が、いま所属する福岡ソフトバンクホークスのスカウトの福山さんに連絡してくださって、セレクションを受けられることになったんです。ちょうど球団が三軍制を始めるタイミングだったのもあって2011年、育成選手として球団最下位の6位でプロに入ることができました。
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甲斐選手には、先般のWBCでの激闘の裏にあった栗山英樹監督と選手の思い、自身が育成選手からプロへの切符を掴む道のり、その中での愛読書の存在について語っていただきました。
◉躍進の原動力は監督と選手の呼応
◉恩師、本、母に心を支えられて
◉自然に沁み込んだ一冊の語録
◉何のために野球をするのか
プロフィール
甲斐拓也
かい・たくや――平成4年大分県生まれ。楊志館高校卒業後、育成ドラフト6位で23年福岡ソフトバンクホークス入団。25年支配下登録。29年開幕一軍入り、育成出身捕手として史上初のゴールデングラブ賞、30年育成出身選手初の日本シリーズ最高殊勲選手賞(MVP)受賞。令和5年第5回WBCでも主戦捕手として世界一に貢献。
編集後記
WBC日本代表として扇の要を守った甲斐選手のお話を伺っての印象は、まさに謙虚にして驕らず。自分の実績を誇示することはなく、野球人生を支えたお母様や故・野村克也監督について、いきいきと語られている様子が印象的でした。2020年の春、『毎日新聞』のコラムで弊社刊『生きよう今日も喜んで』を紹介してくださったことをきっかけに結ばれた縁でした。
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