渡部昇一先生に学んだ自己修養と読書 江藤裕之(東北大学大学院教授)

「知の巨人」「稀代の碩学」と称された上智大学名誉教授・渡部昇一氏。2017年4月17日に86歳で天寿を全うされたが、いまなお多くの人を感化して已まない。氏の直弟子として専門の英語学に留まらず、古典・歴史・哲学などを通して人生観・仕事観を築いてきた江藤裕之氏に、恩師の忘れ得ぬ教えや思い出を辿りつつ、恩師に学んだ自己修養と読書のあり方を語っていただいた。

やらない理由は考えるな。すると天からロープが降りてくる

渡部昇一
上智大学名誉教授
昭和5(1930)年10月15日~平成29(2017)年4月17日

渡部先生の謦咳に接した日々はいささかも色褪せることはなく、まさに私にとって一時千金の時間だったとつくづく思います

江藤裕之
東北大学大学院教授

我が恩師・渡部昇一先生は生前「一攫(いっかく)千金」を捩(もじ)って「一時(いっとき)千金」とよく口にされていました。

時間は有限であり、大変な価値がある。ゆえに寸陰を惜しみ、無駄にしてはならない――。

渡部先生が旅立たれて6年、4月17日のご命日に七回忌の集いが行われましたが、改めて振り返っても、先生の謦咳に接した日々はいささかも色褪せることはなく、まさに私にとって一時千金の時間だったとつくづく思います。

2016年秋、渡部先生との最後の共著となった『グローバル・エリート教育』(PHP研究所)の取材で、清風中学高等学校副校長の平岡弘章氏と共に先生を囲んで座談会を行った時のこと。

当時、先生86歳。既に病が体を蝕(むしば)み、座談会の少し前からご体調を崩されていましたが、話が進むにつれ舌鋒はますます鋭くなり、みるみるうちに顔色もよくなってこられました。

当初、2時間程度を予定していた座談会の収録は4時間半を過ぎ、まさに談論風発、知的にも精神的にも衰えを一切感じさせない恩師の姿がそこにありました。

私自身もまたこのような老い方をしたい、先生のようにいつまでも若々しく活躍したいと敬慕の念と憧れを強くしたものです。

30年以上にわたり渡部先生にご指導をいただき、英語学はもとより人生観・仕事観に大きな影響を受けてきた直弟子の一人として、先生が日頃愛読し、応援していた『致知』誌で、先生に学んだ自己修養と読書についてお話しできることを大変光栄に思います。

プロフィール

江藤裕之

えとう・ひろゆき――昭和38年福岡県生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業。同大学院にて社会学、英米文学の修士課程を修了後、アメリカのジョージタウン大学に留学。ジョージタウン大学よりPh.D.、上智大学より博士(文学)を取得。渡部昇一氏に英語学を師事。平成25年より東北大学大学院国際文化研究科教授。共著書に『グローバル・エリート教育』(PHP研究所)『学びて厭わず、教えて倦まず〝知の巨人〟渡部昇一が遺した学ぶべきもの』(辰巳出版)など。


編集後記

去る4月17日のご命日に行われた渡部昇一先生七回忌の集いで、教え子を代表してスピーチされたのが東北大学大学院教授・江藤裕之さんです。取材では渡部先生との出逢いや思い出、心に残る教えを回顧していただきましたが、まさに在りし日の渡部先生を彷彿とさせる内容でした。

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