ミシュラン三ツ星に選ばれ続ける店はどこが違うのか 米田 肇(HAJIMEオーナーシェフ) 岸田周三(カンテサンスオーナーシェフ)

世界各国の飲食店や宿泊施設を選りすぐり格付けする『ミシュランガイド』で、最高峰の三ツ星を長年にわたって獲得し続けている名店がある。大阪のガストロノミーレストラン「HAJIME」と、東京のフレンチレストラン「カンテサンス」。東西の三ツ星店をそれぞれ切り盛りするオーナーシェフの米田 肇氏と岸田周三氏の歩みはまさに挑戦と創造の連続だった。お二人が語り合う一流プロの仕事の流儀に学ぶものは多い。

昨日よりは今日、今日よりは明日へと日々成長することが大事

岸田周三
カンテサンスオーナーシェフ

 これはうちのスタッフや研修生にいつも言うんですけど、与えられる仕事は最低限こなすべきことであって、それをどれだけやっても評価には繋がらないですよね。
頼まれていないけど、これをやったら皆が助かると思うことを率先する。そういうプラスアルファがあって初めて加点されるんです。
 自分から求めないとチャンスは与えられないので、こういうことに挑戦したい、こういうものを創造したい、こういう人間になりたいという大きな夢を持つことが、まず大切だと思います。
「昨日よりは今日、今日よりは明日へと日々成長することが大事」
これは僕の師匠パスカル・バルボがよく言っていた言葉ですが、その決意さえあれば行動が生まれ、道は開けていくというのが、これまでのシェフ人生を通しての実感です。

どんなに完璧だと思ってもそれは完璧ではない

米田 肇
HAJIMEオーナーシェフ

 僕はフランスで最初のお店に2年間勤めた後、一ツ星レストランで一年働き、そこから北海道のザ・ウィンザーホテル洞爺にあるミシェル・ブラスの支店に入りました。
 年に数回行われる特別フェアの時にブラスは来日するんですが、いつも直前までメニューが送られてこない。
 料理をつくり始めても、盛りつけた後に「いや違うかなぁ」「こっちに変えよう」とか言っているんですね。
 天才シェフと言われるような人であっても、最後の最後まで足掻き、悩み、考え抜いて最高の料理をつくろうとする姿勢に心を打たれました。
「どんなに完璧だと思ってもそれは完璧ではない」
 これはブラスが僕に伝えてくれた言葉ですが、これでもか、これでもかと完璧を求め続けるところに挑戦と創造の極意があるのかもしれません。

プロフィール

米田 肇

よねだ・はじめ―昭和47年大阪府生まれ。近畿大学理工学部卒業後、東証一部上場の総合部品メーカー勤務を経て、26歳で料理の道へ。辻フランス料理専門カレッジ(現・エコール辻大阪)卒業後、大阪と神戸のフランス料理店で働き、平成14年渡仏。帰国後、「ミシェル・ブラス」の支店での修業を経て、20年35歳で大阪に「HAJIME」を開業。1年5か月後に世界最短でミシュラン三ツ星を獲得。25年「アジアのベストレストラン50」に選出されるなど、世界的な評価を得ている。

岸田周三

きしだ・しゅうぞう―昭和49年愛知県生まれ。高校卒業後、料理の道に進む。名古屋調理師専門学校卒業後、三重県の志摩観光ホテルや東京のフランス料理店に勤務し、平成12年渡仏。「アストランス」をはじめ複数のレストランでの修業を経て、18年東京の白金台に開業した「カンテサンス」のシェフとなる。19年史上最年少(当時)の33歳でミシュラン三ツ星を獲得。以来、現在まで15年連続で三ツ星に選出。23年よりオーナーシェフ。25年店舗を東京の品川御殿山に移転した。


編集後記

共にミシュラン三ツ星シェフである米田肇さんと岸田周三さん。お互い通じ合うものが多く、二時間半に及ぶ白熱の対談となりましたが、修業時代や独立当初の波瀾万丈なエピソードがとりわけ印象的でした。お客様に選ばれ続けている一流プロの共通点がそこから見えてきます。

2022年4月1日 発行/ 5 月号

特集 挑戦と創造

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