5 月号ピックアップ記事 /インタビュー
人生はいくつになっても新しいことの連続 鎌田由美子(ONE・GLOCAL社長)
いまや常識となった駅構内での商業施設の運営。このエキナカビジネスを30代の若さで立ち上げたのが鎌田由美子さんである。挑戦と創造を重ね、現在は地域の活性化に情熱を注ぐ女性事業家に、自身を突き動かすエネルギーの源についてお聞きした。[写真は初めに手がけた「エキュート大宮」の現在の様子。食品店だけでなく雑貨店、本屋も並んでいる]
30代は一番悩んでいたと思います。先が見えないまま、とにかく目の前のことにひたすら全力で取り組んでいたら、少しずつ視界が開けてきて、40代になって一生やりたいと心の底から思えるいまの仕事に巡り合えたんです。
鎌田由美子
ONE・GLOCAL社長
――そのエキナカビジネスを手掛けられたいきさつは。
鎌田
2000年の中期計画の中で「ステーション・ルネサンス」の計画が生まれ、「通過する駅から集う駅へ」というキャッチフレーズが掲げられました。混雑緩和、施設の老朽化対策、バリアフリー化等々、お客様サービスに関わる様々な駅の可能性をもう一度ゼロベースで見直すことになりました。バリアフリー化が遅れていた大宮駅で最初のプロジェクトが生まれ、私がそのプロジェクトリーダーを務めることになったのです。
メンバーは私を含めたった三人で、上にいるのは後にJR東日本の副社長になった取締役担当部長の新井良亮さん、後にりそな銀行会長になった副社長の細谷英二さんだけ。凄まじいまでの中抜きプロジェクトでした(笑)。
メンバーの後輩二人が不安気に、「俺たち何をやるんですかね?」と聞いてくるけど私にも分からない。新井さんに相談すると、「それを考えるのが仕事だろ」「おまえたち、駅に不満はないのか?」と。その言葉を手がかりにまずは初電から終電まで駅に立ち、三人で議論を重ねていったんです。
――若手三人からエキナカビジネスが立ち上がっていったのですね。
鎌田
はい。青写真が出来上がるまではもう、死ぬほど考えました。文字通り寝ても覚めても。いろんな人に会い、話を聞き、仮説をぶつけました。
最初は、とにかく駅の空間を変えたかったんです。一番不満だったのは、暗い、汚い、臭いトイレであり、殺伐として空調もないコンコース。次に若い女性が躊躇する駅蕎麦や日持ちのする東京土産、そしてあちこちに貼られた広告。「集う」とは何か、常にこの言葉が頭にあり、そこからエキナカプロジェクトが始まったんです。
プロフィール
鎌田由美子
かまだ・ゆみこ―茨城県生まれ。平成元年JR東日本入社。13年エキナカビジネスを手がけ、17年「ecute」を運営するJR東日本ステーションリテイリング社長に就任。その後、本社事業創造本部で「地域再発見プロジェクト」を立ち上げ、地産品の販路拡大や農産品の加工に取り組む。27年カルビー上級執行役員。30年ONE・GLOCAL設立、社長に就任。著書に『「よそもの」が日本を変える』(日経BP)など。
編集後記
「こんなにおいしいリンゴジュースは初めて飲んだ」
鎌田さんが現在つくられている樹上完熟りんごの無添加ジュースを始めて飲んだ時の感想です。
このリンゴジュースは50代になって会社を立ち上げて挑戦したもの。JR東日本に新卒で入社し、エキナカビジネスを立ち上げるなど20年以上活躍した後の独立でした。
いくつになっても新しいことに挑戦する鎌田さんの姿勢に、多くの学びをいただきます。
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