12 月号ピックアップ記事 /インタビュー
最悪の時こそ最高である 正垣泰彦(サイゼリヤ会長)
国内外に1,500店舗を超え、年間来客数は2億人を上回るカジュアルイタリアンレストラン「サイゼリヤ」。来年で開業55年の節目を迎える。創業者の正垣泰彦氏は大学4年生の時、千葉県市川市に17坪・38席の洋食屋をオープンし、そこから幾度もの危機を乗り越え、今日の発展を築き上げた。サイゼリヤと共に生きてきた半世紀を振り返りつつ、その原点にある母親の教え、体験を通して掴んだ成功の法則、リーダーの心得などについて伺った。死中に活を求め、道を切り拓いてきた人物に学ぶものは多い。
失敗や挫折、艱難辛苦の時こそ自分を変えるチャンス、より成長させるチャンス。そうやって捉えると、いいことも悪いことも人生で起こることはすべて最高、これ以上のものはないと思える。そういう心構えで努力すれば必ず花が咲きますよ
正垣泰彦
サイゼリヤ会長
――このような困難な時代にリーダーとして求められることは何だとお考えですか?
《正垣》
なぜ困難が起きるかというと、そこには必ず原因があります。多くの人はその原因を人のせい、世の中のせい、あるいはコロナのせいにするんですけど、実際には自分にあるんです。失敗の理由を他に押しつけていては一歩も前に進めない。原因は自分の中にある。そう考えることが最も建設的だと思います。
普通は自分を変えるってなかなかできません。ただ、うまくいかない原因が自分にあると腹落ちすれば、自分の考え方を変えなければならない。困難な状況に直面すると苦しいですよね。でも、苦しい時にしか本当に自分を変えることはできないんです。
だから、困難や辛苦の時は自分を変えるチャンス。周りの人をより幸せにできる、会社を大きく成長発展させるチャンス。いままで自分が考えてやってきたことの結果として、困難な現象が起きていると捉えたほうがいいんです。
そうやって捉えると、何が起きるか。いいことも悪いことも人生で起こることはすべて最高、常に最高だって思える。最悪の時こそ実は最高なんです。
そして、乗り越えられない困難は来ない。自分を変えることによって必ず目の前の困難は乗り越えられる。これはいままでの自分の経験の中で実感し、かつ信じていることです。
プロフィール
正垣泰彦
しょうがき・やすひこ――昭和21年兵庫県生まれ。42年東京理科大学4年次に、レストラン「サイゼリヤ」を千葉県市川市に開業。43年同大学卒業後、イタリア料理店として再オープン。48年マリアーヌ商会(現・サイゼリヤ)を設立、社長就任。平成12年東証一部上場を果たす。21年より現職。27年グループ年間来客数2億人を突破。令和元年7月国内外1500店舗を達成。同年11月旭日中綬章受章。著書に『サイゼリヤおいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』(日経ビジネス人文庫)。
編集後記
昨年来のコロナ禍により、外食産業は大打撃を受けています。
その渦中にあって苦戦しながらも、今期(2021年8月期)経常利益ベースで黒字に転じ、決算発表以降に株価が大きく跳ね上がるなど、健闘しているのがサイゼリヤです。
「創業期に何をやってもお客さんが全く来なかった時のほうが、よっぽど経営は大変でした」と語る創業者・正垣泰彦さん、75歳。
1時間半の取材を通して、お母様の教えや物理の学びを生かしつつ、幾多の修羅場を経験する中で培ってきたポジティブマインドとバイタリティーに圧倒される思いでした。
困難を乗り越えるリーダーのあり方とはいかなるものか、学ぶものは多いでしょう。
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