12 月号ピックアップ記事 /対談
『代表的日本人』に学ぶ人間学 數土文夫(JFEホールディングス名誉顧問) 堀 義人(グロービス経営大学院学長)

日本が近代化への道を歩み始めて間もない1908年、日本人の本質を伝えるべく一冊の英文の書籍が世界に向けて発行された。キリスト者・内村鑑三による『代表的日本人』である。同書で紹介された西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人の五人は共に死中にあって活路をひらいた偉人といってよい。同書を愛読し、経営や人生の指針としてきたJFEホールディングス名誉顧問の數土文夫氏、グロービス経営大学院学長の堀義人氏に五人の生き方や、いまを生きる私たちへのメッセージなどを語り合っていただいた。

僕もこれまで人生にはチャンスがあるだけだと思って生きてきました。捉え方によっては逆境もすべてが成長のチャンスなわけですから
數土文夫
JFEホールディングス名誉顧問
私たちは壁にぶつかると、すぐに逃げたり反発したり他の道を探したりしがちですが、壁の存在をしっかりと認め、受け入れた上で、アイデアを練って新しい高みに至ったのが、尊徳のみならず五人に共通した生き方でしょうね。

私がこの五人の生き方を通して思うのは、いろいろな逆境に直面しながらも、そこにはすごい悲壮感があったかというと、実は全くなかったのではないかということです
堀 義人
グロービス経営大学院学長
試練というのは自分を成長させてくれるきっかけであり、それを受け止めることで人間はさらに強固になっていくんです。
死中、試練、危機にあってこそ成長できると思えば、私たちはもっとそれを喜ばなくてはいけない。「死中活あり」とはそういう意味を含んでの言葉だと解釈しています。
いまのこのコロナ禍にしても、それを成長の機会と思えるかどうかです。

プロフィール
數土文夫
すど・ふみお―昭和16年富山県生まれ。39年北海道大学工学部冶金工学科を卒業後、川崎製鉄に入社。常務、副社長などを経て、平成13年社長に就任。15年経営統合後の鉄鋼事業会社JFEスチールの初代社長となる。17年JFEホールディングス社長に就任。22年相談役。経済同友会副代表幹事や日本放送協会経営委員会委員長、東京電力会長などを歴任し、令和元年5月旭日大綬章受章、同年6月より現職。
堀 義人
ほり・よしと―昭和37年生まれ、茨城県出身。61年京都大学工学部卒業後、住友商事入社。平成3年ハーバード大学経営大学院修士課程修了。4年グロービス設立。8年グロービス・キャピタル(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。18年グロービス経営大学院設立、学長に就任。G1/KIBOW代表理事、水戸ど真ん中再生プロジェクト座長、茨城ロボッツ/茨城放送の取締役オーナー。著書に『日本を動かす「100の行動」』(PHP研究所)『吾人の任務』(東洋経済新報社)など。
編集後記
明治維新から40年後の1908年、内村鑑三は日本の素晴らしさを世界に伝えるべく『代表的日本人』を著します。JFEホールディングス名誉顧問の數土文夫さん、グロービス経営大学院学長の堀義人さんが語り合う西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人の5人の足跡と言葉は、いまを生きる私たちの人生や仕事に大きな示唆を与えてくれます。

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