11 月号ピックアップ記事 /インタビュー
長唄に生かされ107歳 明日死ぬまでも長唄の心を伝え続けたい 杵屋響泉(長唄三味線方演奏家)
300年余の伝統を誇る長唄三味線の伝承者・杵屋響泉さんは御年107歳。名人として名を馳せた父の導きにより、4歳でこの道に入って以来、弛まぬ努力、精進によって技と心を磨き続け、いまなお現役奏者として活躍を続けている。まだ見ぬ高みを目指し、自身のすべてを懸けて前進し続ける求道者に、この芸に懸ける思いを伺った。
挫けないことですね。気持ちだけは負けちゃいけません
杵屋響泉
長唄三味線方演奏家
――2年前の105歳の時には、『一〇五 娘がつなぐ五世勘五郎の長唄世界』を発表され、CDデビューを果たされましたね。
杵屋
聴いてくださったのですか。ありがとうございます。
初めての体験でしたけど、録音する時はお部屋にどなたもいらっしゃらないので、気持ちを持っていくのが大変でございました。聴いてくださる方がいらっしゃると、調子が乗ってくるんですが(笑)。
このCDには、父のつくった曲を収録したのですが、私が子供の頃に教わったノリ(運び)や曲想を残しておきたい、父の心をお伝えしたいという願いがございました。長唄を少しでもいまの人にお伝えすることができたなら、本当に嬉しく思います。
――それにしても、実にお元気そうですね。
杵屋
食事は何でも残さずいただきますし、朝食の後は新聞を隅から隅まで読むんです。こうしていまも元気でいられるのは、やはり長唄をやっているからです。長唄ができるからこそ、ここまで長生きできたんですね。
プロフィール
杵屋響泉
きねや・きょうせん――大正3年東京府生まれ。『島の千歳』『新曲浦島』等の作曲で知られる五世杵屋勘五郎の一人娘として、4歳で長唄の手ほどきを受け、10代から後進の育成に尽力。昭和38年より「杵屋響泉」を名乗る。平成17年長唄協会より永年功労者として表彰。29年文部科学省より伝統長唄保存会、重要無形文化財長唄保持者に認定。31年文化庁長官表彰。105歳で『一〇五 娘がつなぐ五世勘五郎の長唄世界』でCDデビューを果たす。
編集後記
記事の中でも書かれていますが、杵屋響泉さんは100歳を超えてから何度か、三味線奏者として致命的な大怪我をされ、その度に凄まじい気力を発して乗り越えてこられました。実は、弊誌の取材時も体が本調子ではありませんでした。しかし三味線のお話を始めた途端、エネルギーが迸(ほとばし)り出し、始終楽しそうに、そして熱く、107年に及ぶ人生を振り返ってくださいました。
弊誌の「長唄(三味線)が心からお好きなのですね」との質問に対し、テーブルをバシッと叩いて「大好きです!」と答えられたお姿が忘れられません。文字通り圧倒されっぱなし、大感動の取材でした。
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