11 月号ピックアップ記事 /二十代をどう生きるか
すべてはいまの積み重ね。 いま、この瞬間に全力を尽くそう 為末 大(Deportare Partners CEO)
陸上競技の400メートルハードルでオリンピック三大会連続出場を果たし、世界陸上では短距離種目で日本人初の銅メダルを獲得した為末大氏。世界の強豪と互角に渡り合ってきた氏は、いかに己を磨き、その才能を開花させたのか。その競技姿勢から〝走る哲学者〟の異名をとった現役時代の挑戦と葛藤を振り返っていただいた。
弱点の後ろには長所が潜んでいる
為末 大
Deportare Partners CEO
自分と徹底的に向き合っていくと、いくら潰しても消えない欠点に突き当たります。そしてある時ハッと、そういう自分をこのまま生かしていくしか道はないんだと、心が転換する瞬間が訪れるのです。
私は100メートル走に取り組んでいた頃、タイムを少しでも縮めるため、歩幅を狭くして足を速く動かす練習を繰り返しましたが、なかなか思うように成果が出ませんでした。ところがハードルに転向すると、歩幅が広い私は逆に有利になったのです。
弱点の後ろには長所が潜んでいるものです。しかし、こうでなければならないという先入観が強過ぎると、その長所になかなか気づけません。二十代は、自分の短所に悩むことも多い時期だと思いますが、その後ろにある大切な長所に気づくためにも、自分の思い込みに気づき、それがどこから来ているかを確認することが重要です。
プロフィール
為末 大
ためすえ・だい――昭和53年広島県生まれ。中学、高校時代より陸上競技で活躍し、平成13年エドモントン世界選手権及び17年ヘルシンキ世界選手権の男子400メートルハードルで銅メダルを獲得。シドニー、アテネ、北京とオリンピック3大会に出場。男子400メートルハードル日本記録保持者。24年に引退後は、会社経営などを通じてスポーツと社会、教育、研究に関する活動を幅広く行っている。著書に『諦める力』(プレジデント社)『為末メソッド』(日本図書センター)など。
編集後記
「走る哲学者」の異名で知られる元陸上選手の為末大さん。その異名の通り、取材では弊誌の質問一つひとつに真剣に向き合い、丁寧に言葉を紡ぎ出される姿が印象的でした。哲学的な話に及ぶことが多々あり、普段から為末さんがいかに思考を大事にしているかが伝わってきました。
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