6 月号ピックアップ記事 /対談
道は足下にあり 青山俊董(愛知専門尼僧堂堂頭) 大谷哲夫(駒澤大学元総長)
目の前のいま、ここに命のすべてを注ぎ込む生き方を禅は私たちに教えてくれている。愛知専門尼僧堂堂頭・青山俊董氏、駒澤大学元総長・大谷哲夫氏は共に只管打坐の修行に打ち込みつつも、宗祖・道元禅師の教えを深く学び、その教えを広く伝えてこられた。長年、仏道に生き心を深く掘り下げてきたお二人に、これまでの歩みや禅の神髄を語り合っていただいた。
道元禅師は「深まるほどに足りない自分に気づく」とも教えられましたが、修行を積めば積むほどに謙虚になり、自分の未熟さに気づく。これが本当の修行の姿であろうと思います
青山俊董
愛知専門尼僧堂堂頭
私は自分では落第堂頭だと思っていますが、講義をしようと思えば、書物の見直しをします。そこに気づきがあります。しかし、その気づきは自分の受け皿の大きさでしかいただけない。仏法という相手は無限の大きさがありますから、受け皿が小さいなら小さくしかいただけないんです。
それでも、たとえ遅々たる歩みであったとしても、ちょっとは受け皿が大きくなりますわな。学び直し、読み直しをする度に「ここに気がつかなかった」「もう一歩、ここを掘り下げることができたな」といろいろな気づきをいただけるようになるんです。
修行と悟りは仏祖の大道であり、円(まる)い輪のように道環して果てしなく巡るものです。悟ったら終わりではない。悟りが無窮である以上、修行もまた無窮なのですね
大谷哲夫
駒澤大学元総長
悟りと修行は循環しており、それはどこまでも高まっていかなくてはいけないと説かれている。道元禅師には「悟りを開いたからそれで満足していい」という考えは微塵もないわけです。仏法をこのように表現された祖師は、鎌倉新仏教の祖師の中にもおられません。
プロフィール
青山俊董
あおやま・しゅんどう――昭和8年愛知県生まれ。5歳の時、長野県の曹洞宗無量寺に入門。駒澤大学仏教学部卒業、同大学院修了。51年より愛知専門尼僧堂堂頭。参禅指導、講演、執筆のほか、茶道、華道の教授としても禅の普及に努める。平成16年仏教伝道文化賞功労賞を受賞。21年曹洞宗の僧階「大教師」に就任。著書に『道はるかなりとも』(佼成出版社)『一度きりの人生だから』(海竜社)『般若心経ものがたり』(大法輪閣)など多数。CDに『人間の花を咲かせる禅の教え』(致知出版社)など。
大谷哲夫
おおたに・てつお――昭和14年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、同大学院文学研究科東洋哲学専攻修了。駒澤大学大学院博士課程。曹洞宗宗学研究所所員・講師を経て、駒澤大学に奉職。同大学教授、副学長、学長、総長、都留文科大学理事長、東北福祉大学学長を歴任。現・北京大学客員教授、国際(日中)禅文化交流協会会長。長泰寺住職。著書に『道元一日一言』(致知出版社)『祖山本永平広録考注集成(上・下)』(一穂社)『永平の風 道元の生涯』(文芸社)など多数。
編集後記
自分の足下にしっかりと目を向け、そこに全力を傾けて生きよ、と禅では説きます。愛知専門尼僧堂堂頭の青山俊董さんと駒澤大学元総長の大谷哲夫さんには、禅の中心となる教えに迫っていただきました。お二人のお話を通して、禅の教えは修行者だけのものではなく、私たちの仕事や人生を豊かにする知恵であると気づかされます。
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