凡事徹底の人 鍵山秀三郎さんに学んだこと 阿部 豊(日本を美しくする会/東京掃除に学ぶ会所属) 木南一志(新宮運送社長)

日常生活の基盤となる掃除を徹底して掘り下げることによって、人を変え、会社を変え、学校を変えることができる。それを自らの実践によって証明してみせたのが、イエローハット創 業者で日本を美しくする会相談役の鍵山秀三郎さん、87歳である。その鍵山さんに63歳で出会って以来、側近として今日まで20年間にわたって鍵山さんの活動を支えている阿部 豊氏。事業がうまくいかなかった時に鍵山さんと出会い、「掃除をすれば会社がよくなる」という鍵山哲学の薫陶を受け、自ら「掃除に学ぶ会」を立ち上げてその教えを日々実践している木南一志氏。鍵山さんの凡事徹底を間近で見てきたお二人に、その「足下を掘る」生き方についてお話しいただいた。

鍵山秀三郎(かぎやま・ひでさぶろう)
昭和8年東京都生まれ。27年疎開先の岐阜県立東濃高校卒業。28年デトロイト商会入社。36年ローヤルを創業し社長に就任。平成9年社名をイエローハットに変更。10年同社相談役となり、22年退職。創業以来続けている掃除に多くの人が共鳴し、近年は掃除運動が国内外に広がっている。日本を美しくする会相談役。著書に『凡事徹底』『あとからくる君たちへ伝えたいこと』『鍵山秀三郎 人生をひらく100の金言』、共著に『志を継ぐ』(いずれも致知出版社)などがある。

大きな努力で小さな成果を懸命につくり上げる。
鍵山さんの人生そのものという感じがします

木南一志
新宮運送社長

木南
 本日は阿部さんと鍵山さんについてお話しできるというので、早めに出てきたんです。そうしたら対談場所のホテルの前でばったりお会いして(笑)。

阿部
 これはまあ鍵山さんの教えですよね。

木南
 そうですね。鍵山さんは約束の一時間以上前にその場所の近くまで行って待っていますから。でも、「待ちましたよ」とは言わず、時間になると知らん顔で現れる。

阿部
 とにかく控えめで、出しゃばらないですね。

木南
 ふっと気がついたら、えっそんなところに居たんですかみたいな感じなんですね。

阿部
 そうそう。ところで、木南さんが鍵山さんに初めて会ったのはいつ頃ですか?

木南
 平成11年の夏に、北九州で私の友人が主催した鍵山さんの講演に行ったのが最初です。その後すぐにハガキが届いたので驚きました。講演会には800人ぐらい参加していましたし、名刺交換も100人ぐらい並んでいたのに、2~3日後にハガキが届いたんです。

阿部
 鍵山さんは講演先で大勢にお会いしますでしょう。すると私のところに電話が掛かってきて、「この人にこの本を送ってください」というように指示されるわけです。鍵山さんから指示があったら何を措いても即実行。これは私がいまなお一貫して心掛けていることでしてね。すぐに手配しますから、翌日にはその方のところに届く。それはびっくりされますよ。

木南
 大きな努力で小さな成果を懸命につくり上げる。鍵山さんの人生そのものという感じがします。そこを阿部さんは陰で支えてこられたから、完全におもてなしの人になっておられますよね……

微力ではあるが無力ではない。鍵山さんのこの言葉を大切にしています

阿部 豊
日本を美しくする会/東京掃除に学ぶ会所属

木南
 私は外から見ているだけですけれども、鍵山さんにとって阿部さんはすごく安心できる存在なんだと思います。実際、鍵山さんは阿部さんのことを「心の親戚、というより兄弟に等しい」とおっしゃっていましたから。
 厳しい鍵山さんを何があっても支える存在というのは、鍵山さんにしてみればこれほどありがたい人はいないでしょう。取るに足らないことでも二人で共有できると安心感が生まれるんですね。
 菅刈公園と目黒川の掃除に私も加わらせていただくことがありましたけれども、お互いに段取りが分かっているから、それぞれ別の場所で掃除をしていても終わるのは一緒。この関係はなかなかすごいなと思いました。

阿部
 全然自覚がない(笑)。とにかく誠心誠意、努めるのが本分だと思っていましたから。まあ鍵山さんに嵌ったんでしょうね。鍵山さんの傍にいて学んだことはたくさんあります。とにかく几帳面だし、やることは素早いし、誰にでも平等に接しますし。
 特に障碍のある方を非常に大切にしていました。イエローハットの物流センターには障碍者の方やパートの方が大勢いらっしゃいますけれども、鍵山さんがお手伝いに行くと、障碍者の方が喜んで抱きつくんですよ。傍で見ていても嬉しいことばかりでした。パートの方とも年一回、必ず慰労会をやっておられました。いまでも食事会をされていますから。

プロフィール

阿部 豊

あべ・ゆたか――昭和13年愛知県生まれ。県立新城高校卒業後、東海銀行に就職。53歳で退職後、住宅ローン保証会社に就職。63歳で定年退職した後、イエローハットに入社。平成17年「日本を美しくする会」事務局担当、平成20年鍵山秀三郎相談役担当に就任。令和元年10月に鍵山秀三郎事務所を退職し、現在、NPО法人「子どものいのちを守る会」所属。

木南一志

きみなみ・かずし――昭和34年兵庫県生まれ。流通経済大学卒業後、大手運送会社に勤務。59年父親が創業した新宮運送に入社。平成元年、兵庫物流社長に就任。この頃、鍵山秀三郎氏の教えに出合う。平成5年、4000日間の無事故無違反を推進する『S-DEC運動』を開始。「風を起こさない運転」を推進し、21年「エコドライブコンテスト」にて環境大臣賞受賞。24年、環境エコドライブ活動コンクール最優秀賞。近年は企業参加型のリサイクルシステム事業を確立するなど、運送業を中心に多彩な事業展開を行っている。


編集後記

東京掃除に学ぶ会の阿部豊さんと新宮運送社長の木南一志さん。お二人は示し合わせていないにも拘らず、取材開始の一時間半前に会場の入り口で遭遇したそうです。約束の時間に遅れないよう余裕を持って行動する。師匠・鍵山秀三郎さんの「凡事徹底」の生き方を一つひとつ素直に実践されているお二人の言葉には力が宿っています。

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