6 月号ピックアップ記事 /対談
一手一手に最善を尽くして 山本益博(料理評論家) 杉本昌隆(将棋棋士)

名人――どの分野にも、そう呼ばれる一流人がいる。才能や技術だけでは辿り着けないその特別な境地に達した人を各界に求め、鋭い論評を展開してきた山本益博氏。名人を頂点とする将棋の世界で鎬を削りつつ、藤井聡太二冠を筆頭に優れた弟子の育成でも注目を集める杉本昌隆氏。一流の人物をつぶさに見てきたお二人に、そこに至る条件について語り合っていただいた。

どんな分野でも、10代のうちに1万時間の練習を費やすことで、
本物になれるチャンスを掴むことができるといいます
山本益博
料理評論家
自分の狭い価値観で人を評価したり作品を見ていると、分からなくなってしまうんですね。だから常に真っ新で素直な状態でいなければならないし、自分自身がいつまでも現役でいなければいけないと思うんです。
無我夢中ってなかなかなれないけど、好きなことだったら時間を忘れて集中できますよね。自分にとってのそういう対象を見出して、無我夢中で最善を尽くすことが、自分の可能性をとことん掘り下げていくことに繋がっていくのではないでしょうか。

常にいまの時代に対応できるように
感性を磨き続けなければならないと思っています
杉本昌隆
将棋棋士
将棋って読み切れるものではないので、すべてを読んで指すことは不可能です。それでも、自分にはもうこれしかないと思えるまで一手一手精いっぱい考え抜いて指しています。
もう定年だからとか、若い人がいるからみたいな感じで諦めてしまいがちですけど、一流の人はやっぱり妥協しないし、どこまでも向上心を忘れずに歩み続けている。そうして自分の足下をしっかり掘り、幾つになっても挑戦を続けることで、若い人もそれに感化されて後に続いてくれるのでしょうね。
プロフィール
山本益博
やまもと・ますひろ――昭和23年東京都生まれ。47年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版される。57年に『東京・味のグランプリ200』を出版して以来、日本で初めての「料理評論家」として活躍中。著書に『イチロー 勝利への10ヵ条』(静山社文庫)など多数。
杉本昌隆
すぎもと・まさたか――昭和43年愛知県生まれ。昭和55年六級で故・板谷進九段に入門。平成2年四段に昇段しプロデビュー。平成31年八段。第77期順位戦で史上4位の年長記録となる50歳でのB級2組昇級を果たす。地元の東海研究会では幹事、また杉本昌隆将棋研究室を主宰。藤井聡太の師匠としても知られている。著書は専門書の他に『弟子・藤井聡太の学び方』(PHP研究所)など。
編集後記
名人と謳われる人は、一般の人々と何が違うのか。イチロー選手など各界のレジェンドを鋭く論評してきた料理評論家の山本益博さんと、天才棋士・藤井聡太二冠の師匠としても有名な将棋棋士の杉本昌隆さんに縦横に語り合っていただきました。お話の中に出てくる名人たちのエピソードには心を鼓舞されます。

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