5 月号ピックアップ記事 /対談
誰かのために生きる時、人間の命は輝く 塩見志満子(のらねこ学かん代表) 高橋 恵(おせっかい協会会長)
共に弊社刊『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』に登場された塩見志満子さんと高橋恵さんの人生は、幼少期から試練の連続だった。しかし、その試練を糧に力強く生きる中で、二人は誰かの幸せのために生きる中にこそ、人生の真の喜びがあることを知る。塩見さん85歳、高橋さん79歳。いまなお縁ある人たちのために命いっぱいに生きるお二人に、これまでの歩みを語り合っていただいた。
許すというのは身を切られるように辛いけど、どこまで人を許せるかを死ぬまでテーマにして生きていったら、人生はきっと楽しくなると思います
塩見志満子
のらねこ学かん代表
20年以上前、主人が定年退職後に交通事故で亡くなった時もそうでした。夫を撥ねた若いトラックの運転手がやってきて、
「僕は殺されても仕方がありません。奥さんのいいようにしてください」
と泣きながら土下座をして謝りました。いまでも何でそんなことを言ったか分かりませんが、世界一憎らしいその人に私は言うたんです。
「あなたは若いから、主人の分まで幸せになってください、私が警察に嘆願書を出すからどうかそうしてください。私はあなたを許すことからしか次の一歩を踏み出せないんです」と。
母は私たちが小さい頃から何かにつけて「天知る」「地知る」「我知る」という言葉を教えてくれました。いいことも悪いことも天地が見ている、そして誰よりも自分が一番よく知っているという戒めです
高橋 恵
おせっかい協会会長
母は私たちが何か悪さをしようものなら、鬼の形相をして三人を並ばせ、この言葉を復唱させました。時には一人ずつパンパンパンと右頬を叩き、今度は反対側の左頬をパンパンパンと叩くんです。「左頬はお父さんの分です」と言って……。
でも、厳しいばかりかというとそうではなく、「あなたには、こんなに素晴らしいところがあるじゃない」と、いいところを見つけてはいつも褒めてくれました。それに、私たち姉妹を全く比較せずに育ててくれたこともまた、どんな人でも皆幸せになってもらいたいという私の考え方を形づくってくれたと思っています。
プロフィール
塩見志満子
しおみ・しまこ――昭和11年愛媛県生まれ。日本女子体育大学卒業後、東京都立中学校、愛媛県立高校、同養護学校で教師を務める。退職後、自宅横に知的障碍者が集える「のらねこ学かん」を設立。講演などを続けながら運営に当たる。
高橋 恵
たかはし・めぐみ――昭和17年生まれ。短大卒業後広告代理店に勤務。同社を結婚退職後、2人の娘の子育てをしながら様々な商品の営業に従事し、トップセールスを記録。60年42歳の時にサニーサイドアップを設立。現社長の長女・次原悦子と高校時代の友人・松本里永を巻き込んで始めた同社は現在東証一部に上場。平成25年おせっかい協会を設立。著書に『あなたの心に聞きなさい』(すばる舎)。5月に新刊『営業の神様が笑う時』(秀和システム)を刊行予定。
編集後記
のらねこ学かん代表の塩見志満子さん、おせっかい協会会長の高橋恵さんは、共に人生の節目において様々な逆境に遭遇しながらも、その試練をバネに人間的な成長を遂げてこられました。私たちが許し合い、愛し合い、支え合うことがいかに大切なことなのか。お二人の話は人生を心豊かに生きる上での示唆に富んでいます。
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