5 月号ピックアップ記事 /インタビュー
僕が命懸けの冒険に出る理由 阿部雅龍(プロ冒険家)
2019年1月、日本人初のルートで南極点単独徒歩到達を成し遂げたプロ冒険家の阿部雅龍氏。幼い頃に抱いた夢を叶え、幾度となく生死の狭間を越えながら活動を続ける阿部氏を冒険へと突き動かすものとは何なのか。恩師の教えや大自然から掴んだことと共に伺った。
僕は自分が嫌いで、自分を変えるために冒険家になる道を選んだので、冒険家を諦めるという選択肢はありませんでした
阿部雅龍
プロ冒険家
――これまで様々な冒険に挑まれていますが、命の危機を感じることはありませんでしたか?
〈阿部〉
冒険ですから死の淵を覗く経験は一度や二度ではありません。アマゾン川ではマラリアに罹って高熱が続き幻覚を見ました。北極では白熊にテントを襲撃されたこともあります。
中でも最も自分が試されたと感じるのは、2016年にグリーンランドで北極圏単独歩行を行っていた時、凍てつく北極の海に落ちてしまったことです。気温マイナス40度の世界から、凍る直前の水温ゼロ度の海に落ちると、落ちた瞬間は温度差から温泉に浸かったように暖かく感じます。ところがすぐに体の感覚がなくなり、焦りが出てくるんです。
氷の上では体重を分散するためにスキー板を履いているので、その板ごと慎重に海から上がらなければなりません。周囲の氷も薄く、匍匐前進するようになるべく表面積を増やして少しずつ這い上がって、何とか命拾いしました。
――そうした緊急時にパニックを起こさないために大切なことはありますか?
〈阿部〉
とにかく冷静に、落ち着いて淡々と自分ができることをしなければ生き残れない。それが恩師の大場さんの教えです。冒険では……【続きは本誌をご覧ください!】
プロフィール
阿部雅龍
あべ・まさたつ――昭和57年秋田県生まれ。平成16年大場満郎氏主宰の冒険学校でスタッフとして働く。17年秋田大学在学中に南米大陸単独自転車縦断。22年Continental Divide Trail単独踏破、24年乾季のアマゾン川の2000km単独筏下りを達成。26年から3年連続で北極圏単独徒歩。31年1月日本人で初めてメスナールートによる南極点単独徒歩到達918キロメートルを達成。現在、同郷の探検家・白瀬矗中尉の足跡を辿り、単独徒歩で南極点を目指している。著書に『次の夢への一歩』(角川書店)がある。
編集後記
人類初ルートでの南極点到達に挑む冒険家の阿部雅龍さん。なぜ死と隣り合わせの冒険に出続けるのか、その雄心に迫ります。
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