先人が教える日本の生き筋——新型コロナウイルスといかに共存するか 渡辺利夫(拓殖大学学事顧問)

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大がいまだ留まるところを知らない。世界でも例を見ない「自粛要請」によって危機を乗り切った日本も、感染の第2波、第3波の発生をはじめ、あらゆる国家緊急事態に万全の備えをしておく必要がある。この先の見えない混迷と不安の時代をどう生き抜けばよいのか――政治、経済、歴史など様々な分野に通暁する拓殖大学学事顧問の渡辺利夫氏に、コロナ以後の世界の中で、いまこそ求められる心構え、日本人の生き方について縦横に語っていただいた。
※表示画像は後藤新平(左)児玉源太郎(右)Ⓒ国立国会図書館HP「近代日本人の肖像」

不安を常態のものとしてありのままに見つめる、こうした心の姿勢こそコロナ以後の世界で何より求められる

渡辺利夫
拓殖大学学事顧問

 森田療法の創設者で心理学者の森田正馬の高弟・高良武久も、「不安は存在するのが常態である。これが事実である。それゆえ、不安を排斥して異物扱いしてはならない」と言っています。そもそも人間はウイルスをはじめ無数の見えない敵に囲まれて生存しています。すべての敵に対処するのは不可能です。不安を常態のものとしてありのままに見つめる、こうした心の姿勢こそコロナ以後の世界で何より求められるものなのです。
 中国が行ったような人々の人権と自由を蹂躙する強権的手法とは対極にある「日本モデル」が、これから襲ってくる可能性のある第2波、第3波でも成果を残すとなれば、本格的な日本の「ソフトパワー」となることは間違いないでしょう。

プロフィール

渡辺利夫

わたなべ・としお――昭和14年山梨県生まれ。慶應義塾大学卒業後、同大学院修士課程修了、博士後期課程満期取得退学。経済学博士。筑波大学教授、東京工業大学教授、拓殖大学学長、第18代総長などを経て、現職。外務省国際協力有識者会議議長、アジア政経学会理事長なども歴任。JICA国際協力功労賞、外務大臣表彰、第27回正論大賞など受賞多数。著書に『神経症の時代─わが内なる森田正馬』(文春学藝ライブラリー)『士魂─福澤諭吉の真実』『死生観の時代』(共に海竜社)『台湾を築いた明治の日本人』(産経新聞出版)などがある。


編集後記

新型コロナウイルスの脅威にどう対処、共存していけばよいのか―。拓殖大学学事顧問の渡辺利夫さんが紐解く歴史の事例、日本人の特質から、コロナ禍を乗り越えていく指針、心構えを学びます。

2020年8月1日 発行/ 9 月号

特集 人間を磨く

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