子供の自主自立の精神を養う希望の授業 —— 学力日本一 東成瀬村の秘密 鶴飼 孝(秋田県東成瀬村教育長)

文部科学省が平成19年から実施している全国学力テストで、開始以来トップクラスの成績を収め続けている秋田県。中でも人口僅か2,500人余りの東成瀬村の成績が特に高いといわれている。民間の塾がない豪雪地帯で、特別な教材を用いずにいかに子供たちのやる気を引き出してきたのか。その独立独歩の歩みを東成瀬村教育長の鶴飼孝氏に伺った。

東成瀬村には「地域づくりは人づくり。人づくりは教育」という考えが連綿と受け継がれていて、村の年間予算のうち約1割は教育に充てられています

鶴飼孝
秋田県東成瀬村教育長

(秋田県の東南端に位置する東成瀬村は、“学力日本一の村”として注目を浴びていますね)

鶴飼 
 ありがとうございます。文部科学省が実施している全国学力テストにおいて、秋田県は13年間連続でトップクラスの成績を収めています。市町村ごとの成績は公表されていないものの、2007年に当時の秋田県知事が「東成瀬中が秋田県で一番。小学校もいい」と言及したことで、一躍有名になりました。おかげで毎年、国内外から600名近い視察者が訪れているんです。

(具体的に授業で行われている工夫を教えてください)

鶴飼 
 先生が一方的に話し続ける内容を黙々とノートに取るという受け身の授業ではなく、子供たちが課題について自分で考え、答えを導き出すことに重きを置いています。それを「探究型授業」と呼んでいるのですが、授業ごとに設けられた課題を皆で議論しながら理解していく仕組みです。
 例えば算数の単位量あたりの大きさを求める問題に対しては、この授業の課題が「密度」であることを皆で掴んだ上で、各自答えを考える時間を持ちます。当然様々な答えが出るわけですが、それを導き出した理由と共に子供たちに発表させます。そうして子供同士で議論させて最終的に一つの解を導き出すことで、深い学びに繋がるのです。基本的に全教科でこの方法を使っています。

(問題を解く力だけでなく、思考力や発言力なども養われますね)

鶴飼 
そうなんです。探究型授業で重要なのが……

※続きは本誌52ページをご覧ください。

プロフィール

鶴飼孝

つるかい・たかし―昭和19年秋田県生まれ。秋田大学教育学部英語科卒業後、18年間秋田県内で中学校教諭として働く。平成元年45歳からは行政機関に入り、秋田県教育庁義務教育課長、教育センター長を歴任。平成18年62歳の時に東成瀬村の教育長に就任。


編集後記

学力日本一と謳われる秋田県東成瀬村。教育長の鶴飼孝氏が語る子供たちの自学自習を促す指導に興味は尽きません。

2019年12月1日 発行/ 1 月号

特集 自律自助

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