創業131年 人形町今半 髙岡哲郎(人形町今半社長) 藤間秋男(TOMAコンサルタンツグループ会長)

極上の黒毛和牛のとろけるような食感と芳醇な香り。すき焼きの老舗として知られる人形町今半は、1895(明治28)年の創業以来、131年の年輪を刻んできた。その揺るぎないブランド力は、いかなる思いのもとで磨き上げられてきたのだろうか。名店の知られざる変遷に迫った。

進化は変化であり、変化し続ければ必ず新たに紡いでいける何かに出合える

髙岡哲郎
人形町今半社長

〈藤間〉
先日、御社会長であるお兄様のご講演を拝聴した時に、すき焼き弁当を振る舞っていただきましたが、実においしかったですね。温泉卵が添えてあったので、おいしさが一層引き立ちました。

〈髙岡〉 
ありがとうございます。火を通していない生卵は衛生基準をクリアできないので、皆で検討して温泉卵を添えることにしました。

そのことと関連するのですが、先々代の父はお客様第一主義が信条で、お客様から言われたことに徹底してお応えしてきた人でした。そのおかげで、もともと東京の人形町ですき焼き屋を一店舗営業していた当社が、支店を出したり、精肉店、ケータリング、割下(たれ)の物販まで手を広げたりすることになったんです。

〈藤間〉 
私がお父様に初めてお目にかかった時にはまだここまで大きくなかった気がします。いま社員さんは何人いらっしゃるのですか。

〈髙岡〉 
約1,400人になりました。

父は次男坊で負けん気が強かったので、商売を大きくしたいという野望は当然あったと思います。その野望を実現するために、とにかく目の前のお客様に喜んでいただくことを繰り返しているうちに商売が大きくなってきたわけです。

最初の支店は、三菱地所の副社長様に勧められて、新有楽町ビルの地下に出しました。係長クラス向けにいい料理屋がほしいと頼まれて、お昼時に定食を500~600円で提供すると大変喜ばれましてね。

常連のお客様が課長、部長に昇進するのに応じてお店のグレードも上がり、最終的に重役の方々にご利用いただく高級店になりました。お供をしてこられる社員さんが、女将を務めていた母に気に入られると昇進するという噂まで広まり、人気店としてのブランディングも確立したのです。……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~
◇目の前のお客様に喜んでいただく
◇転機となった関東大震災
◇夢を語る父に憧れを抱いて
◇会社清算の危機を乗り越えて
◇理念を本気で実現する会社にしたい

〈ホスト〉
藤間秋男(とうま・あきお)
TOMAコンサルタンツグループ会長

昭和27年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。公認会計士税理士。明治23年創業の藤間司法書士事務所の末裔として、昭和57年藤間公認会計士税理士事務所を新規創業。230名の総合コンサルファームにTOMAグループを成長させ、平成29年より会長。著書に『中小企業の事業承継はじめに読む本』(すばる舎)『100年残したい日本の会社』(扶桑社)など多数。

プロフィール

髙岡哲郎

たかおか・てつろう――昭和36年東京都生まれ。60年玉川大学文学部卒業後、人形町今半入社。仕入れ、調理、販売を経て、日光東観荘へ出向。専務取締役支配人となる。平成2年日光東観荘売却。米国コーネル大学へ留学。3年帰国。本店店長などを経て、13年副社長。令和5年社長に就任。


編集後記

事業承継コンサルタントとして百年続く企業づくりに取り組む藤間秋男氏が、百年企業の強さの秘密を探る本連載。第11回となる今回は、すき焼きの老舗として知られる人形町今半の髙岡哲郎社長にご登場いただきました。淡々とした語り口の奥に、預かった事業を未来へ繋いでいこうとする情熱が垣間見えました。

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