志あるところに必ず道はできる 上甲 晃(志ネットワーク「青年塾」代表) 橋本志津(Ark館ヶ森会長)

100ヘクタール、野球場約100個分に及ぶ広大な敷地に広がるArk館ヶ森(岩手県一関市)。自然や動物たちと触れ合えるだけでなく、生産者が丹精込めて育てた豚や羊肉・放し飼い鶏の卵、無農薬野菜などを購入、堪能することができるArk館ヶ森には、年間20万人もの人々が訪れるという。夫で創業者である橋本輝雄氏と共に、今日のArk館ヶ森をつくり上げてきた会長の橋本志津氏、その志に共鳴する志ネットワーク「青年塾」代表の上甲晃氏のお二人に、夢を実現していく要諦、いのちを育み、日本の明るい未来をつくる農業のあり方について語り合っていただいた。

求める気持ちがない人は、「出逢って出逢わず」、いい人に出逢っても出逢いになっていかないと思います

上甲 晃
志ネットワーク「青年塾」代表

<上甲> 
私が初めてArk館ヶ森を訪れたのは、いまから20年ほど前でした。大手トンカツチェーンの社長を務めていた元岡健二さんに「志の実践例としてぜひ見てほしいところがある」と、橋本さんを紹介していただいたんです。

<橋本> 
ええ、ちょうど、元岡さんにArk館ヶ森の「自然食レストラン ティルズ」の運営についてご指導を仰いでいる時でした。

<上甲> 
それに、当時は橋本さんのご主人で創業者の輝雄さんが亡くなってまだ間もない頃でしたね。いまでも強く印象に残っているのは、社員の皆さんが創業者のことを「近づけば火傷するような人だった」と話してくれたことです。

<橋本> 
夫は2001年に亡くなりましたけれども、「俺に近づけば火傷するぞ!」とよく言っておりました。その言葉の通り、本当に夢と志に溢れた熱い人でした。

<上甲> 
私はその時、火傷するほどの情熱溢れる人に会ってみたかったなと思うと共に、創業者の夢と志を受け継ぎ、女手一つで家庭を切り盛りしながら、会社の経営に懸命に努力されていた橋本さんの姿にとても心打たれたんです。

以来、私が主宰する志ネットワーク「青年塾」では、この自然豊かなArk館ヶ森を学びの場として、何度も講座を開催させてもらいました。特に塾生たちが自分の手で鶏を解体して食し、いのちの大切さを学ぶ体験実習は定番の学びとなりました。また、そのご縁をきっかけに、橋本さんの二人のご子息、長男の晋栄さん、次男の友厚さんが「青年塾」の塾生になってくれ、いまそれぞれArk館ヶ森の運営母体である㈱アークの社長、専務として活躍されていることは本当に嬉しい限りです。

ロマン、夢を持ってめげずに挑戦していけば、必ず道は開けていくというのが私の実感です

橋本志津
Ark館ヶ森会長

〈橋本〉 
Ark館ヶ森は、よく豊かな自然や動物たちとの触れ合いを楽しむ「観光牧場」だと思われがちです。でも実際は、私たち生産者が育てた豚・羊・放し飼い鶏の卵・無農薬野菜・有機小麦などを自分たちで加工し、自分たちの手でお客様に提供する〝生産農場〟であり、消費者であるお客様と生産者である私たちがお互いの顔を見ながら交流できる〝ファーマーズマーケット〟なんですね。

また、後から詳しくお話ししますけれども、グループ会社の「㈱若葉」で有機肥料センターも運営し、養豚場の排泄物やレストランから出る生ごみなどを集めて完熟発酵させて、JAS(日本農林規格)認定された有機肥料をつくっています。

その高品質の有機肥料を畑の土づくりに使用することで、「育てる」「つくる」「繋げる」、そして「循環する」という永続的な循環型農業を実践しているんです。

〈上甲〉 
永続的な循環型農業。時代を先取りした取り組みですね。……(続きは本誌をご覧ください)

~本記事の内容~
◇時代を先取りしたArk館ヶ森の実践
◇〝金色の鍵〟からすべては始まった
◇食卓から生まれた理念「食はいのち」
◇無添加、手づくりのハム・ソーセージへの挑戦
◇魅力ある場所に、必ず人は集まってくる
◇よりよい未来をつくる農業の方舟を目指して
◇試練を乗り越え、創業者の志を形に
◇志が道なきところに道を創る原動力になる

プロフィール

上甲 晃

じょうこう・あきら――昭和16年大阪市生まれ。40年京都大学教育学部卒業、松下電器産業(現・パナソニック)入社。56年松下政経塾に出向。理事・塾頭、常務理事・副塾長を歴任。平成8年松下電器産業を退職、志ネットワーク社を設立。翌年青年塾を創設。著書に『志のみ持参』『続・志のみ持参』『志を教える』『人生の合い言葉』『松下幸之助の教訓』(いずれも致知出版社)など。

橋本志津

はしもと・しづ――昭和23年埼玉県生まれ。埼玉県立熊谷女子高校卒業後、養豚業を営む橋本輝雄氏と結婚。養豚業の事業拡大を目指す中でより広い土地を求め、51年岩手県藤沢町(現・一関市)に移住し、㈲橋本ファーム岩手牧場を開設。その後、「食はいのち」の理念のもと、ハーブガーデン、手づくり㈲館ヶ森ハム工房の設立などに取り組み、平成4年に館ヶ森アーク牧場(現・Ark館ヶ森)を開設。創業者の夫・輝雄氏の急逝により13年に社長に就任。21年より会長。


編集後記

岩手県一ノ関駅から車で約40分、人里離れた大自然の中に年間20万人が訪れる牧場&体験型施設Ark館ヶ森はあります。その活動を応援する志ネットワーク「青年塾」代表・上甲晃さんと共に現地を訪れると、会長の橋本志津さんは笑顔で歓待してくださいました。日本の未来にとって農業や食が重要であること、強く抱いた志は周囲の人々に受け継がれて現実になっていくことを教えられます。

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