1 月号ピックアップ記事 /第一線で活躍する女性
飢餓問題は対岸の火事ではありません 焼家直絵(国連世界食糧計画〈WFP〉日本事務所代表)
2020年10月にノーベル平和賞を受賞した国連世界食糧計画(WFP)。食糧支援を通じすべてのSDGs(持続可能な開発目標)に貢献することを目的に、世界各地の貧困の最前線で支援活動を続けていることが評価されました。WFP日本事務所元代表の焼家直絵さんは、中高生の頃に志を固め、2001年に国連で働くとういう夢を叶えました。差別のない平和な世界の実現のために、いまなお奮闘努力の日々を重ねている焼家さんの原点、人生の転機に迫ります。
自分のなりたいイメージが明確であれば、人生の選択をする上で判断基準になります
焼家直絵
国連世界食糧計画〈WFP〉日本事務所代表
──焼家さんがこの道に進まれた原点を教えてください。
焼家
広島出身ということもあり、私が通っていた私立の中高一貫校はかなり平和教育に力を入れていました。早い段階から平和な世界を実現するために自分はどんな貢献ができるかを考え、国連や国際問題に強い関心があったんです。
授業で映画『塩狩峠』を見たことも私の人生観に深く影響を与えたと思っています。この映画にあまりにも衝撃を受け、原作である『塩狩峠』(三浦綾子・著)も読みました。1909年に北海道の塩狩峠で実際に起きた列車事故を基にした作品で、ブレーキが利かなくなり暴走した列車を止めるため、主人公が線路に飛び出し、自分の身体でもって列車を止めるというストーリーです。
自らの命と引き換えに乗客の命を救う、自己犠牲について深く問い掛けたこの話が忘れられなかったんです。作中には身分の差に関係なく人間は皆同じであるとの考え方も説かれており、自分も将来人の役に立つ生き方をしたい、差別なく平和な世界を実現することをライフワーク(天職)にしたいと志すようになりました。
──それは何歳頃のことですか?
焼家
中学3年から高校1~2年の頃だったと思います。
私は現在、学生に話をする機会がよくあるんですけど、人生の早いうちに何か共感すること、共鳴する経験があると、それがその後の人生の核になり、ライフワークになると伝えています。思いを実現する方法はいろいろあるので、具体的な職業まで決める必要はありません。ただ、何か生き方のベースをしっかり持つこと、その大切さをお伝えしています。
プロフィール
焼家直絵
やきや・なおえ――昭和47年広島県生まれ。
平成8年国際基督教大学教養学部国際関係学科卒業。13年から国連世界食糧計画(WFP)ローマ本部で
ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)として働いた後、ブータン、スリランカ事務所にてプログラム・オフィサー、
支援調整官として勤務。21年から日本事務所にて資金調達を担当。25年からシエラレオネにて副代表として
エボラ緊急支援など現場を指揮。27年からミャンマー副代表、29年6月から現職。
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