我が柔道人生を語る 山下泰裕(東海大学特任教授/全日本柔道連盟名誉会長)

柔道家として前人未踏の戦績を重ね、引退後も国の枠を超えて柔道界の発展に尽力し続けてきた山下泰裕氏。3年前には不慮の事故で大怪我を負うも、奇跡的に復帰を果たし、些かも衰えることのない闘志をもって、なおも柔の道を歩み続けている。人生の大きな転機を迎えたいま、山下氏の胸に去来するもの。そして柔の道を一筋に歩み続けて見えてきたものは何か。復帰後、初めての表舞台となったフィロソフィ経営実践塾(旧盛和塾横浜)での講演をここに紹介する。

どんなに些細でも自分にできることを精いっぱいやり、最後まで柔道家らしく生き続けたいと念じています

山下泰裕
東海大学特任教授/全日本柔道連盟名誉会長

皆さん、こんにちは。本当にお久しぶりでございます。

私は、2023年に頸髄損傷の大怪我を負い、しばらく入院、リハビリ生活を続けておりましたので、こうして多くの皆さんの前で講演させていただくのは、怪我をした後は初めてです。両手両脚が不自由で、肩から下は麻痺しておりますから、うまくお話ができるか、できないか、分かりませんけれども、上のほうから見てくださっている稲盛和夫塾長から叱責されないように、気を引き締めてお話ししたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

このフィロソフィ経営実践塾の前身は、京セラ創業者・稲盛和夫塾長に学ぶ勉強会・盛和塾横浜でございます。私も15年くらい前に在籍して、他の塾生の皆さんと一緒に学び、酒食を共にしながら語り合ったことをとても懐かしく思い出します。本日はまず、稲盛塾長との出会いからお話ししたいと思います。

いまから35年くらい前、自己啓発のビデオを購入したところ、そこの会社の社長さんからプレゼントされたのが、稲盛塾長の講話テープでした。「なぜ経営に哲学が必要か」「大善をなす勇気」といったテーマで、ご自分の失敗を織り交ぜながら、飾ることなく、実直な口調で淡々とお話しになっていて、耳を傾けているうちに、もう全身に染み渡るように塾長の教えが入ってくるんです。私は通勤時間などを利用して、そのテープを擦り切れるくらい繰り返し聴き、ご著書もたくさん購入して夢中で読み耽りました。

そんな折、ご縁のあった方から「一緒に稲盛哲学を勉強しませんか?」とお誘いをいただき、盛和塾へ入塾したのが始まりでした。私は塾長にお目にかかるのがとても待ち遠しく、初めて対面する前に夢で2回もお会いしていたほどでした。……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~(全7ページ)
◇一歩でも二歩でも近づきたい存在
◇人生のチャンピオンになれ
◇柔道で会得したことを日常生活で生かす
◇何かを成そうと思ったら多くの人を巻き込むこと
◇スポーツを通して世界平和に貢献してほしい
◇日本の外交に柔道で貢献する
◇「僕の名前はいくら使っても構わないから」
◇試合に勝つだけでいいのか
◇子供たちと共に成長する
◇最後まで柔道家らしく生き続けたい

プロフィール

山下泰裕

やました・やすひろ――昭和32年熊本県生まれ。小学4年で柔道を始め、全日本選手権大会9連覇、ロサンゼルス五輪無差別級金メダル、対外国人選手無敗、公式戦203勝の戦績を上げる。60年現役引退。その後、柔道教育ソリダリティー理事長、全日本柔道連盟会長、日本オリンピック委員会(JOC)会長などを務めた。著書に『背負い続ける力』(新潮社)など、共著に『武士道とともに生きる』(角川書店)などがある。


編集後記

ロサンゼルス五輪柔道無差別級で金メダル、公式戦203連勝など、現役時代に無類の強さを誇った山下泰裕さん。3年前、事故で大怪我を負ったとのニュースは世間に衝撃をもたらしましたが、長期療養を経て見事に復帰を果たし、このほど講演会に登壇されました。重い後遺症の残る身で淀みなく披瀝された「最後まで柔道家らしく生き続けたい」との決意に、胸が熱くなりました。

2026年6月1日 発行/ 7 月号

特集 続けてこそ道

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