7 月号ピックアップ記事 /インタビュー
能楽修業に終わりなし 宝生欣哉(下掛宝生流十三世宗家)

ワキ方下掛宝生流十三世宗家として、600年以上続く能楽の歴史と伝統を守り、次世代に継承している宝生欣哉氏。2023年には、親子三世代、能楽界最年少で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。能楽界を支える氏に、「名人」と謳われた先代・宝生閑師との修業の日々を交え、体験から掴んだ成長していく要諦、一道を極めていく心構えを伺った。
【写真=1983年7月2日、能「羅生門」を親子三代で勤める。写真右から宝生欣哉氏、祖父・弥一師、写真中央が父・閑師 ©宝生欣哉氏】

時代が移り変わっていく中で、能楽が600年続いてきたのは、やはり先人たちが能はこういうものだという基本、中心をしっかり守り、次の世代に伝承してきたからです。ですから、先人たちが伝えてきた基本を大事にしてくことが、能楽における「続けてこそ道」なのだと思うんです
宝生欣哉
下掛宝生流十三世宗家
――宝生さんは、自然な形で能の道に入っていかれたのですか。
<宝生>
そうですね。5歳頃から祖父、父と稽古が始まり、装束を着て舞台に出たのは8歳でした。ご褒美をもらったりして、特に祖父は優しく稽古してくれました。
ところが、それがだんだん厳しくなっていって、稽古が嫌になったんです。小学生の時は、学校から帰って父がいると、すぐ稽古になりますから、ばれないよう玄関に入ってランドセルを置き、そのまま遊びに行くなんてことはしょっちゅうやっていました(笑)。おそらく、能楽界でも私の稽古量はかなり少なかったと思います。
――その中で、いかにワキ方の技量を高めていかれたのですか。
<宝生>
もちろん、完全に逃げることはできませんから、嫌々ながらでも小・中・高とずっと稽古は続きました。ただ、父は具体的なことは教えてくれないんです。例えば、舞台で立ち止まった位置が悪いと言うだけで、どこに立ち止まればよいのかは教えない。謡いの稽古で台詞を忘れても、父は私が思い出すまでずーっと黙っているんです。沈黙が30分続く時もありました。で、最後は馬鹿野郎! と怒鳴られて、時に手が飛んでくることも当時はよくありました。
――厳しく鍛えられたのですね。
<宝生>
要は、手取り足取り教えてもらうのではなく、自分で「ああ、そうか」と気づいて実践していく、体で覚えていかないと、本当には成長できないということです。……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~(全4ページ)
◇自分はまだまだ 能楽の道に終わりなし
◇下掛宝生流の芸を次世代に継承する
◇教えてもらうのではなく、自分で掴み取っていく
◇学びと成長の機会はあらゆる場所にある
◇父からもらった唯一の「ありがとう」
◇素直な心が道を究める力になる
本記事では人間国宝の宝生欣哉さんに、先人たちの教えを継承し、一道を極めていく要訣をお話しいただきました。ぜひ全文をご覧ください。
プロフィール
宝生欣哉
ほうしょう・きんや――昭和42年東京都生まれ。幼い頃から祖父・弥一師、父・閑師に師事。8歳で『猩々乱(しょうじょうみだれ)』で初舞台。25歳で『道成寺』を披く。海外公演にも多数参加。平成12年芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。28年下掛宝生流13世宗家を継承。令和5年親子三世代、能楽界最年少で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。
編集後記
取材は宝生様のご自宅兼稽古場にて行われました。三世代、能楽界最年少で人間国宝に認定された宝生さんですが、編集部の質問にも終始謙虚な姿勢で、丁寧にお答えくださいました。何事にも謙虚な姿勢で学び続ける、まだまだと稽古を積み重ねる、そこに宝生さんが人間国宝に認定され、活躍を続ける理由があるのだと実感する取材となりました。

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